
https://www.vintagevibe.com/products/wurlitzer-200-series-faceplate-and-knobs-combo
今回は、世界的に有名なエレクトリックピアノであるFender社「Rhodes」とWurlitzer社「Wurlitzer」の違いをまとめました。
(それぞれ「ローズ」「ウーリッツァー」と読みます)
ジャンルを問わずさまざまな音楽で使われるこの2つのエレクトリックピアノについて、それぞれの特徴・違いを解説します。
「Rhodes」と「Wurlitzer」の音を聞いてみよう
はじめに、RhodesとWurlitzerの音を聞いてみましょう。
両者を聞いてみると、とても魅力的な音がする点は共通していますが、少しキャラクターに違いがあることがわかります。
ここからは、この有名な2つのエレクトリックピアノの違いについて、具体的に解説していきます。
「Rhodes」と「Wurlitzer」の違いとは?
RhodesとWurlitzerの違いは、大きく分けて2つあります。
構造の違い
Rhodesは音源(音を作るパーツ)としてタインを使っており、Wurlitzerはリードを使っている
音色の違い
Rhodesの方が鐘(ベル)のようにきらびやかで丸く、Wurlitzerの方が重みがありシャープでパンチがある
使っているパーツが違うので、音も変わります。
ここでは、具体的に構造の違いについて解説します。
RhodesとWurlitzerの大きな違い1:構造
Rhodesは音源(音を作るパーツ)としてタインを使っており、Wurlitzerはリードを使っています。
タインとは、トーンバー(Tone Bar)と呼ばれる厚い金属のバーが付いている金属の調律スプリングロッドのことです。
(トーンバー+バネ)

Vintage Original Fender Rhodes MKI Electric Piano Tine & Tone Bar Assembly #0-81:https://www.ebay.com.au/itm/125458191908?srsltid=AfmBOorp94YPdyzKxRY7Mh1wKsCJc8LbIKClMfBlHEELaE7rAQV6Pbrk
トーンバーは、精密にチューニングされたフォークのようなパーツです。
ボーカリストがチューニングをするときに音叉を使いますが、このタインの構造はここからアイデアを得て開発されています。
一般的なタイン(音叉)とRhodesのタインの違い
一般的な音叉は2つの均等な突起物(棒)があるのに対し、Rhodesのタインは底部に短く1つしかありません。

https://reverb.com/news/rhodes-vs-wurlitzer-comparing-classic-electric-pianos
Rhodesのタインは、ピアノのハンマーが当たったときの衝撃に耐え、特定の周波数で振動するように設計されています。
細い方の棒の先端にはチューニングスプリングと呼ばれるバネがついていて、この位置が下がると音程が下がり、先端になるほど音程が上がります。

ピンク色の道具を使って、チューニングスプリングの位置を調整する例:https://www.youtube.com/watch?v=BG5_1bnxQC8
特定の周波数(音程)で振動するよう、調整するときは細い棒をわざと弾いて音を出し、チューナーで音程を確認します。
1つ1つのタイン・トーンバーには同線が巻かれたピックアップが搭載されており、プリアンプや出力ジャックと接続されています。

https://soundgirls.org/the-fender-rhodes/

https://rhodesmusic.com/product/individual-pickup-white/?srsltid=AfmBOop2K9gadPj4hBy0P5krk26vBmtUWQy3HislAJUqFNLpK8XhgYfK

https://rhodesmusic.com/product/individual-pickup-white/?srsltid=AfmBOop2K9gadPj4hBy0P5krk26vBmtUWQy3HislAJUqFNLpK8XhgYfK
多くのRhodesでは、ハンマーの先端がゴム仕様になっており、このゴム部分がタインを打つ仕組みになっています。

https://www.vintagevibe.com/blogs/news/the-definitive-guide-to-vintage-vibe-hammer-tips
初期のRhodes製品ではハンマーが木製もしくはフェルト製でしたが、1970年中盤にはゴム仕様に変更され、後期のモデルはプラスチック製に変更されました。
(フェルト仕様のハンマーは初期のモデルで使われています)
ハンマーに使われている素材によって少し音は異なりますが、いずれもタインを仕様している点は変わりません。
Wurlitzerに使われている「リード」とは何か?
リード(Reeds)と聞くと、クラリネットやサックスなどの木管楽器のリードを思い浮かべるかもしれません。

木管楽器に使われるリードは振動させるために木で作られていますが、Wurlitzerで使われているリードは片側が軽くなっている平らな金属の帯です。


https://reverb.com/news/rhodes-vs-wurlitzer-comparing-classic-electric-pianos
リードがハンマーとぶつかると、振動を生成する仕組みになっています。
振動したときに特定のピッチ(音程)になるよう、長さはさまざまに調整されています。
タインと違い、リードは個別のトーンバーではなく「リードバー」と呼ばれる長いバーに付いています。

https://reverb.com/item/18799558-wurlitzer-200-200a-reed-bars-with-reeds
リードバーの大きな一枚のピックアップの溝にリードがはめ込まれる形になっています。
ピックアッププレートから受け取った信号は、オンボードのプリアンプを通り、フェルト製のハンマーの先端でリードを叩きます。
RhodesとWurlitzerの大きな違い2:音色
次は、音色の違いについて解説します。
Rhodesの方が、ベル(鐘)のようにリッチで温かく、丸い音がします。
Rhodesは1960年代から市場に出回り始めたので、この頃に活躍していたミュージシャンたちはこぞってRhodesを使う傾向にありました。
一方、Wurlitzerはクリーンで澄んだ音も出せますが、Rhodesに比べてより重たく歪みがかかったシャープな音も出すことができます。
1950年代にデビューしたアーティストから現在のアーティストまで、今でも幅広いジャンルのアーティストに愛されています。
波形もRhodesの方が丸く、Wurlitzerの方がシャープ
両者の音の波形を見てみると、波形もRhodesの方が丸く、Wurlitzerの方がシャープであることがわかります。
Rhodesの波形

https://reverb.com/news/rhodes-vs-wurlitzer-comparing-classic-electric-pianos
Wurlitzerの波形

https://reverb.com/news/rhodes-vs-wurlitzer-comparing-classic-electric-pianos
RhodesとWurlitzerはどうやって音色を変えているのか?
これまでご紹介した楽曲をお聞きいただいて、同じRhodes・Wurlitzerでも音色がそれぞれ異なっていると感じたと思います。
これは、どちらも内蔵のアンプやディストーション、EQを調整することで音色が変更できるためです。

Rhodesのエフェクト類(一例):https://www.soundonsound.com/reviews/rhodes-mk8

Wurlitzerのエフェクト類(VolumeとVibrato)https://www.vintagevibe.com/products/wurlitzer-200-series-faceplate-and-knobs-combo
さらに、Rhodesの場合はピックアップとタインの位置関係を調整することもできます。
ピックアップからタインを離すか近づけるかによって、音色を変えることができます。
ネジを閉めれば閉めるほどタインの先端が下がり、ピックアップに近づき、倍音が増えます。
またRhodesの本体端にはネジがついており、中には使われていないネジ穴も空いています。
これはプレイヤーが自由にタインの位置を調整できるようにするためです。
リードを使っているWurlitzerは、タインを使っているRhodesに比べてカスタマイズの幅が広くありません。
自由に音色をカスタマイズしやすいのは、Rhodesの魅力の一つと言えるでしょう。
その他RhodesとWurlitzerの違い
構造と音色の他に、RhodesとWurlitzerにはそれぞれ違いがあります。
※さらに、モデルによっても違いがあります
さらに、モデルによっても特徴が異なります。
Rhodes Stage Piano 73 MK1 & MK2 73

https://reverb.com/news/rhodes-vs-wurlitzer-comparing-classic-electric-pianos
・73鍵
・重さ34〜54kg(機能の違いによって異なる)
・モノラル信号
・プリアンプとパワーアンプなし
・低音強化「Bass Boost」のトーンコントロールあり
・スピーカーなし
・サステインペダル付き(取り外し可能)
・クローム脚とサポートロッド(オプション)
・調整可能なタインを使用
Rhodes Suitcase Piano 73 MK 1 & MK 2

https://reverb.com/news/rhodes-vs-wurlitzer-comparing-classic-electric-pianos
・73鍵
・重さ90~113kg(機能の違いによって異なる)
・ステレオ信号
・パワーアンプ・プリアンプ(ステレオピンポントレモロ搭載)
・低音域と高音域のコントロールあり
・ステレオの12インチスピーカー搭載
・内蔵サステインペダル付き(取り外し不可)
・調整可能なタインを使用
Wurlitzer 200A

https://reverb.com/news/rhodes-vs-wurlitzer-comparing-classic-electric-pianos
・64鍵
・重さ24〜29キロ(機能の違いによって異なる)
・モノラル信号
・パワーアンプ&プリアンプ搭載
・内蔵4インチx8インチの楕円スピーカー搭載
・ビブラートコントロールあり
・サステインペダル付き(取り外し可能)
・クローム脚(オプション)
RhodesとWurlitzerのどちらを使えばいいのか?
これまでの解説で、RhodesとWurlitzerの違いについてお伝えしました。
「どちらがいい・優れている」ということはなく、それぞれ特色があり、その時々で合う製品は異なります。
Rhodesの特徴
・鐘(ベル)のようにきらびやかで丸い音
・アンプが内蔵されていないため、低音域をよく聞かせたい場合は注意
→別途プリアンプを使ったり、音色の調整をするのがベター
・Rhodes Suitcaseならステレオで広がりのある音を作れる
・1鍵ずつピックアップが独立しているので、メンテナンスが大変
→逆にメンテナンスを含めて楽しめる人にはおすすめ
Wurlitzerの特徴
・重みがありシャープでパンチがある音
・軽くてコンパクト
→頻繁にライブをする人におすすめ
・ピックアップが1枚のシングルピックアッププレートなので、メンテナンスが楽
RhodesとWurlitzerの音をDTM・作曲で使うには?
RhodesとWurlitzerは非常に人気のあるエレクトリックピアノのため、数多くのメーカーから音をエミュレートしたプラグインが開発されています。
RhodesとWurlitzerのサウンドが使えるおすすめのプラグインとして有名なのは、Rhodes社「Rhodes Wurli」、Spectrasonics社の「Keyscape」、Applied Acoustics Systems社の「Lounge Lizard」です。
こんな人におすすめです
本家のサウンドを使いたい方:Rhodes Wurli
ピアノや有名なシンセサイザーの音も使いたい方:Keyscape
コストを抑えたい方:Lounge Lizard
Rhodesのカスタマイズ・修理系動画
Rhodesはカスタマイズがしやすいため、YouTubeにたくさんのカスタマイズ・修理動画がアップされています。
Rhodesの内部構造がよくわかりますので、ぜひチェックしてみてください。
以上で解説は終了です。
当サイトでは他にも有名な音楽関連機材についてまとめていますので、ぜひこちらもご覧ください🔻