今回は、Music Matterが解説する「対位法の書き方」をまとめました。
対位法は、特に16世紀の西洋音楽や「バロック音楽」と呼ばれる音楽によく使われているテクニックです。
音楽理論のお話なので「難しそう」と思うかもしれませんが、ここでは初心者向けにやさしく解説していきますのでご安心ください。
対位法の使い方1.1オクターブ下げてそのままマネをする
まずは、こちらの楽譜をご覧ください。

「ファ・ソ・ラ・シ♭・ド」の5つが並んでいます。
この5音を使ったメロディーに対位法を使う方法として、まず挙げられるのが「同じメロディーをそのまま使ってみる」です。
例えば右手で「ファ・ソ・ラ・シ♭・ド」と弾いた後、左手を使って1オクターブ下で「ファ・ソ・ラ・シ♭・ド」と弾いてみましょう。
素敵なメロディーラインになりました。
この例の「ファ・ソ・ラ・シ♭・ド」のように、ある1つのメロディーのアイデアのことを「ポイント」と言います。
あるポイントに対するメロディー(Counter)をもう1つ作るということで、英語で対位法のことを「Counterpoint」と言います。
対位法の使い方2.リズムは同じで音程だけ変える
もう1つの方法として、「ポイントとリズムは全く同じで音程だけ変える」という方法があります。
例えば、「ファ・ソ・ラ・シ♭・ド」の後に「ド・レ・ミ・ファ・ソ」と弾いてみましょう。
こちらも、自然でスムーズなメロディーラインになりました。
最後の2音だけ音程の上下の仕方を変えてみると、このようになります。
1音ずつまっすぐ上がっていくのではなく、「ド・レ・ミ・ド・ファ」と、少し音を上下させながら弾いてみました。

こちらもスムーズなメロディーラインになりました。
対位法の使い方3.コードを意識してみる
右手と左手で似たようなメロディーを交互に演奏することにより、まるで右手と左手のメロディーが会話をしているような形になります。
それではもう少し、会話を進めてみましょう。
右手の新しいメロディーラインを考えていきます。
ここで、コード進行について考えてみます。

今回はFメジャースケール(シに♭が付く)を使っています。
そして、今まで作ったメロディーラインを考えると以下のコード進行が合いそうです。
F - C7 - F
ディグリーネームにすると...
I - V - I
左手のメロディーがある2小節目はV(C7)です。
(Vコードは「ドミナントセブンスコード」が使われることが多いです)
C7の構成音は「ド・ミ・ソ・シ♭」ですが、特にシ♭の音がセブンスコードらしい雰囲気を出すことができ、とても特徴的です。
つまり、シ♭の音を使えばC7らしい雰囲気にしやすくなります。
そのため、次の右手のメロディーはシ♭から始めてみましょう。

そして次の小節のはじめの音は、Fメジャーコード(I)に入っている音で、シ♭の1つ下の音であるラにすると、スムーズにつながります。

左手との相性もバツグンです。
対位法の使い方4.新しい要素を追加する
次は、リズムや基本的なアイデアを使いながら、少し違ったメロディーを作ってみます。
音程が上に跳躍するような動きをつけてみましょう。

右手は新しくこのようなメロディーを作ってみました。
さらに、右手のメロディーをもう少し長く続けてみます。

16分音符で「レ・ド・シ♭・ラ」と細かく下がっていくフレーズを追加しました。
このように、はじめに作ったポイントをベースにして新しい要素を追加すると、「同じフレーズを使った単調でつまらないフレーズ」にならずに済みます。
同じフレーズを使いすぎると次の展開が簡単に予測できてしまうので、このように少しずつ新しい要素を取り入れていくとよいでしょう。
対位法の使い方5.ハーモニーを作る
ここで、ここまでの楽譜をおさらいしましょう。

右手からはじまり、右手が終わると次は左手がはじまり、また右手がはじまる…という形で、右手と左手でそれぞれ主役が交代するようなフレーズになりました。
右手と左手が同時に演奏されているところがほとんどありません。
そのため、次はメロディーを交代するのではなく、一緒に演奏してハーモニーを作ってみましょう。
両手で同時に演奏してハーモニーを作るので、まずはコード進行を考えてみます。

今回は、I(Fメジャーコード)の後にI6(Iコードの第一展開形)を、その次にIV(B♭メジャーコード)を使うことにしました。
※Iコードの第一展開形は、下から順に「ラ・ド・ファ」
※「I」の横に通常の数字「6」が書いてあると6コードになりますが、右上に小さく「6」と書いてあると第一展開形という意味になります。右下に小さく4、右上に小さく6と書いてあると第二展開形という意味になります。
そのため、左手ではそれぞれのコードの構成音として使われているラとシ♭を弾きます。

そして、さらにメロディーを追加しました。
右手は16分音符で音がどんどん下がっていくようにしました。
左手はシンプルな4分音符を刻み、右手と合わせるとハーモニーが生まれるようにしています。

最後から2小節目の途中で、Cメジャーキーに変更します。
右手がメインのフレーズが2小節続いたので、今度は左手にバトンタッチします。
ここでは、最初に作ったポイントと似たようなリズムを使いながら、右手から左手への流れをスムーズにした点です。
右手から音をどんどん下り、左手へそのまま繋いでいくようなフレーズにしました。
それでは、通して弾いてみましょう。
はじめのシンプルな「ファ・ソ・ラ・シ♭・ド」のフレーズから発展し、このようなメロディーラインを作ることができました。
縦のハーモニーだけを意識しすぎないようにしよう
対位法を学んでいると、2つのメロディーが合体して作られるハーモニーに気を取られやすくなります。
確かに、楽譜を縦に見てコード進行やハーモニーについて考えることも大切なのですが、対位法はそれだけではありません。
右手と左手が主役を交代したり、流れをスムーズに繋げたりと、横の流れも意識することが大切です。
以上で「対位法の使い方・作り方」の解説は終了です。
当サイトでは他にも対位法の使い方についてまとめていますので、ぜひこちらも参考にしてください。