
今回は「LA-2Aコンプレッサーの使い方」をまとめました。
「有名なコンプレッサー」としてよく名前が挙げられるのが、Teletronix社の「LA-2A」です。
あまりにも有名なため、名前に「LA」や「2A」というワードが入ったコンプレッサープラグインが、さまざまなメーカーからたくさんリリースされています。
なぜこのコンプレッサーは世界中のDTMerに愛されているのか、その魅力と使い方を解説していきます。
LA-2Aコンプレッサーの魅力3つ

LA-2Aコンプレッサーの魅力は、大きく分けて3つあります。
LA-2Aコンプレッサーの魅力
- Attack Timeが少し遅いのでトランジェントを維持できる
- パラメーターが少ないので簡単に使える
- 自然にコンプレッションをかけることができる
以上の理由から、「音のキャラクターをあまり変えず、かつアタックが重要になる楽器」におすすめのコンプレッサーです。
それではここからは、UAD社のプラグイン版「LA-2A」をベースに具体的な使い方についてご紹介していきます。
LA-2Aコンプレッサーの使用例とおすすめの使い方
はじめに、LA-2Aコンプレッサーの使用例とおすすめの使い方をご紹介します。
実際のサウンドを聞いてみると、LA-2Aのよさがお分かりいただけます。
LA-2Aコンプレッサーはボーカルにおすすめ

LA-2Aはアタックもしっかり残してコンプレッションをするため、ボーカルのように子音を際立たせたい・残したい場合におすすめです。
PEAK REDUCTIONを少し多めにしてコンプレッションを強くかけても、元の音を壊さず、自然な形で音がしっかり前に出てくるようになります。
LA-2Aコンプレッサーはアコースティックギターにおすすめ

ボーカルと同様におすすめなのが、アコースティックギターに使う方法です。
特に弦の音が目立つアコースティックギターには、アタック感をしっかり残せるLA-2Aがぴったりです。
LA-2Aコンプレッサーはベースにおすすめ

LA-2Aコンプレッサーは、アコースティックギターだけでなくベースギターにもおすすめです。
特にピックを使っている場合は弦を弾く音が目立つので、LA-2Aを使うことでピック弾きを目立たせることができます。
LA-2Aコンプレッサーはドラムにおすすめ
LA-2Aコンプレッサーはコンプレッションをかけすぎないので、パンチを出しながらも楽器の存在感は前に出したいときに使えます。
そのため、ドラムに使うのもおすすめです。
(特に部屋鳴り・ルームの音が持ち上がり、全体的な音量感がUPします)
バンドで使う楽器すべてにLA-2Aコンプレッサーを使用する例
ボーカル・ギター・ベース・ドラムすべてにLA-2Aを使うと、このようなサウンドになります。
全体的に音量感がUPし、よりはっきりと存在感が出ていることがわかります。
LA-2Aコンプレッサーの使い方
ここからは、LA-2Aコンプレッサーにある各パラメーターをご紹介します。
(LA-2A系のコンプレッサープラグインやハードウェアは多くのメーカーから販売されていますが、多くのパラメーターや操作方法は共通しています)

GAIN:コンプレッサーをかけた後の音の音量をどれぐらい上げるかを決める
PEAK REDUCTION:コンプレッサーをかける音量の基準を決める(スレッショルド)
LIMIT:リミッターのように動作させる(Ratioなし)
COMPRESS:コンプレッサーのように動作させる(Ratioは3:1であることが多い)
OUTPUT+15・GAIN REDUCTION・OUTPUT+4:中央のVUメーターで表示する内容を設定する
(GAIN REDUCTIONに設定するとゲインリダクション量を表示し、OUTPUT+○○にするとOUTPUTの音量を表示します。)
MIX:コンプレッサーをかける前の音(元の音)とかけた後の音の割合を決める
(パラレルコンプレッションができます)
+HF-:INPUT信号に対してハイパスフィルターをかける
(右に振り切るとフィルターがかからず、左に振るほど低音域に反応しにくくなります。バスドラムなど、低音楽器の音量に左右されたくないときに使えます。)
まずはPEAK REDUCTIONでどれぐらいコンプレッションしたいかを決め、ちょうどいい具合にコンプレッションがかかったらGAINで最終的な音量を調整するとよいでしょう。
LA-2A系コンプレッサーの「GAIN」は左側にあるため「INPUT GAIN」と勘違いしてしまうことがありますが、こちらは「OUTPUT GAIN」に該当しますので注意が必要です。
(コンプレッサーをかけたい音の音量ではなく、コンプレッサーをかけた後の最終的な音量を決めます)
VUメーターの見方はこちらの記事で解説しています🔻
LA-2A系コンプレッサーのレシオ・アタック・リリースはどれぐらいに設定されている?
LA-2A系のコンプレッサーにはレシオ(RATIO)、アタック(ATTACK)、リリース(RELEASE)のパラメーターがついていないため、これらを自由に変更することができません。
メーカーによって異なりますが、おおむね以下のように設定されていることが多いです。
レシオ:コンプレッサーモードはおよそ「3:1」、リミッターモードは無限
アタック:およそ10ミリ秒以下
リリース:1stステージは60ミリ秒、2ndステージは0.5~15秒
※LA-2Aはアンプが2段階に分かれており、1stステージはサイドチェインアンプ、2ndステージはMake Up Gain・OUTPUTアンプになっています。
このため、LA-2Aでは比較的ゆるやかなコンプレッションをかけることができます。
(トランジェント・アタック感を残したい楽器に対して使うとちょうどいいでしょう)
LA-2A系コンプレッサーはどのバージョンを使えばいい?(LA-2・Silver・Gray・Tube・LA-3A)
LA-2A系コンプレッサーで特に有名なのは「LA-2」「Gray」「Silver」の3つです。
それぞれ異なる特徴があるため、使い分けるとより理想のサウンドに近づけることができます。

LA-2
初期モデルで、ヴィンテージな雰囲気が欲しいときに便利。
アタック・リリースともに他2つよりも遅め。
(キーボードなどにおすすめ)

Gray
アタックとリリースが中ぐらいの速さで、マイルドにトランジェントを抑えたいときに便利。
(ドラムよりもボーカルやキーボード、ギターなどにおすすめ)

Silver
本家ハードウェアの中では最も新しいモデルで、オールラウンダーでどのシチュエーションにも使いやすい。
アタックとリリースが上記2つより速いため、トランジェントをしっかり抑えたいときに便利。
(ドラム・パーカッション・ベースなどにおすすめ)
どちらかと言うと、最も新しいモデルであるSilverが最もタイトでクリーンなサウンドにしやすいため、現代でもよく使われる傾向にあります。
また、さらに以下2つのモデルもリリースされています。

LA-2A Tube Compressor
LA-2Aシリーズにさらに真空管(Tube)の温かみを加えたバージョン。

LA-3A
FETコンプレッサーなどのソリッドステートコンプレッサーのアグレッシブさと、LA-2Aの真空管サウンドを合体させたバージョン。
両者のいいとこ取りをした万能版。
LA-2A系コンプレッサーを波形で比較してみよう
特に有名な3種類のLA-2A系コンプレッサーを波形で比較してみると、それぞれのアタック・リリースの速度の違いがわかりやすいです。
下記画像のうち、紫色の波形が元の波形で、青色の波形がコンプレッション後の波形です。
紫色の波形が大きくなっているときにコンプレッションがかかり、小さくなっているときにコンプレッションが解除されるように設定しています。
そのため、青色の波形を見るとアタックとリリースの違いがそれぞれわかりやすくなっています。
(各プラグインで同じリダクション量が得られるように調整済み)
LA-2(アタックもリリースも少し遅め)

Gray(LA-2よりもアタック・リリースが速い)

Silver(Grayよりもさらにアタック・リリースが速い)

いずれも同じ量のゲインリダクション量が得られるように設定していますが、LA-2は他の2つに比べてPEAK REDUCTIONを少し多めにしないと同じリダクション量が得られません。
LA-2A系コンプレッサーをスペクトラムで比較してみよう
3種類のLA-2A系コンプレッサーをスペクトラムで比較してみると、それぞれの倍音成分の入り方の違いがわかりやすいです。
シンプルな100Hzの高さのサイン波を鳴らしたとき、倍音がどれぐらい入るかを比較してみます。
(下記画像のうち、左で鳴っている一番大きな音が100Hzの音、それより上の音域で鳴っている小さな波形がLA-2Aを使ったことによって発生した倍音成分)
LA-2

Gray

Silver

わずかではありますが、コンプレッサーをかけたことによって発生する倍音成分も3つそれぞれ異なります。
このような違いが、それぞれの独自のサウンドにつながっています。
「LA-2A」と「1176」は何が違う?

「有名なコンプレッサー」としてLA-2Aと一緒によく名前が挙げられるのが「1176」です。
(製品名に「1176」「76」と付いているコンプレッサープラグインを見かけることも多いと思います)
1176は非常に動作が速いので、ピーク(出過ぎた音)を抑えるのに有効です。
逆に言えば、ボーカルやドラムのように子音やアタック感を残したいときには、LA-2Aの方がよいでしょう。
コンプレッサーのタイプの違い
LA-2Aはオプティカルコンプレッサー(やさしく自然に動作しやすい)
1176はFETコンプレッサー(素早くタイトに動作しやすい)
INPUTゲインとOUTPUTゲインの違い
LA-2AにはINPUTゲインがない
1176にはINPUTゲインがある
アタックとリリースのパラメーターの違い
LA-2Aのアタックとリリースは調整できない
1176のアタックとリリースは調整できる
アタックとリリースの見方の違い
LA-2Aのアタックとリリースは、右に回すほど「遅くなる」
1176のアタックとリリースは、右に回すほど「速くなる」
レシオのパラメーターの違い
LA-2Aはレシオのパラメーターがない(コンプレッサーモードとリミッターモードで調整は可能)
1176にはレシオのパラメーターがある(細かく調整できる)
LA-2Aと1176を組み合わせて使うのもGOOD
LA-2Aと1176はそれぞれ異なる特徴があるため、両者を上手に使い分けると理想のサウンドを作りやすくなります。
例えばより速く動作する1176を最初に使って出過ぎたトランジェントを抑え、その後にLA-2Aを使って楽器の存在感を増すと、音量バランスが整いクリアなサウンドにすることができます。

上記画像は、はじめに1176(赤)、次にLA-2A(緑)を使ったときの波形です。
元の音(紫)に1176を使うことで、突発的に音量が大きい部分を確実に抑えて音量を整えています。
その後にゆるやかで自然に動作するLA-2Aを使い、楽器全体の存在感をアップさせています。
その他、1176の魅力と使い方についてはこちらで解説しています↓
以上で解説は終了です。
今回ご紹介したLA-2Aはさまざまなメーカーでプラグイン版が開発されていますので、ぜひご予算やお好みに応じてチェックしてみてください。
UAD社「Teletronix LA-2A Leveler Collection」
同社LA-2A系コンプレッサープラグインのうち「LA-2」「Gray」「Silver」をエミュレートした製品が同梱されているお得なバンドルです。
UAD社「LA-2A Tube Compressor」
上記バンドルには収録されていない「LA-2A Tube Compressor」の単品です。
UAD社「Teletronix LA-3A Audio Leveler」
上記バンドルには収録されていない「Teletronix LA-3A Audio Leveler」の単品です。
Waves社「CLA-2A Compressor / Limiter」
(CLA Classic Compressorsバンドルに同梱されています)
ミキシングエンジニアの巨匠・Chris Lord-Algeが監修したLA-2A系のコンプレッサーです。
LA-2A系以外にも「1176」などの有名なコンプレッサーをエミュレートしたプラグインがたくさん同梱されている「CLA Classic Compressors」が非常にお得でおすすめです。
当サイトでは他にもコンプレッサーを使いこなすための知識をまとめています↓



