ミキシングのコツ

【MIX】ギターを曲になじませる5つのミックステクニック

How To Fit Guitars In A Mix

今回は、グラミー賞受賞経験もありJST社ともプラグイン開発を行うJoey Sturgisが解説する「エレキギターを曲になじませるミックステクニック」をまとめました。

動画内ではリズムギター(エレキギター)を例に解説されていますが、アコギやリードギターなどにも応用できるテクニックですので、ぜひ最後までご覧ください。

なぜギターのミックスは難しい?

ギターを曲になじませる5つのミックステクニック

ギターのミックスでよくあるお悩みとして、「ギターがうるさい」「音がやわらかすぎてショボい」などが挙げられます。

そのため、ギターのミックスで苦戦するエンジニアもたくさんいらっしゃいます。

なぜギターのミックスがこんなに難しいかというと、「ギターはフルレンジの楽器だから」がその一つの理由でしょう。
フルレンジの楽器:低音から高音まで出る楽器

https://www.youtube.com/watch?v=Dy-2ygVaW7M

よくあるディストーションギターの音をスペクトラムで確認すると、上記の画像のように、低音から高音まで幅広い音の成分を含んでいることがわかります。

音をこのままにしてしまうと、ボーカルやキーボード、ドラムなど他の音のスペースを占領してしまい、邪魔になってしまいます。

それでは、ここからはディストーションギターの音のカッコよさはそのままに、他の楽器のためのスペース(周波数帯域)をしっかり空けるためのコツをご紹介していきます。

ギターを曲になじませるミックステクニック5つ

ギターを曲になじませる5つのミックステクニック

ディストーションギターのミックスにおいて、コツは大きく分けて2つあります。

・正しい音作りをすること
・正しく音作りされた音をミックスすること

とても当たり前のことのように聞こえますが、非常に大切な項目です。

これらをさらに細かく分解すると、5つのポイントがあります。

5つのポイント

  • はじめに演奏を整える(タイミングなど)
  • ギターの音色をベストな状態にしてからミックスを始める
  • IRを利用して曲になじむサウンドを作る
  • 聞こえにくいときは、足し算ではなく引き算で考えてみる
  • 「ギターが聞こえにくい原因は、ギター以外にあるかもしれない」と考えてみる

ここからは、この5つについて具体的に解説をしながら、実際のギターのミックスの手順を一つずつ解説していきます。

ミックスの手順1.ギターの音をチェックする

まずは、ギターの音をチェックします。

まだミックス前の状態なので、ところどころズレやミスがあるでしょう。

例えば下の画像のように、2本のギター(上と下)のリズムがズレていたりします。

https://www.youtube.com/watch?v=Dy-2ygVaW7M

このようなズレやミスを見つけたら、この時点でしっかり修正しましょう。

https://www.youtube.com/watch?v=Dy-2ygVaW7M

ズレを直すだけで、このようにサウンドが変わります。

1:06~1:23

How To Fit Guitars In A Mix

ミックスの手順2.音作りをする

次はギターのトーンを本番用に作っていきます。

音作りに関してはいくつかポイントがありますので、順に説明をしていきます。

アンプのパラメーター「Gain」と「Presence」

実機のギターアンプを使う人もいれば、ギターアンプシミュレータのプラグインを使う人もいると思いますが、特に重要なのはGainとPresenceの2つです。

Gain

https://www.youtube.com/watch?v=Dy-2ygVaW7M

Gainが大きすぎると音が聞き取りづらいような音色になってしまうこともあり、逆に小さいとソロで聞いたときは良い音でも、全体で聞いた時に埋もれてしまうことがあります。

例えば、Gainを変えるだけでこれだけ音の映え方が変わります。

1:36~1:43

How To Fit Guitars In A Mix

Presence

次はPresenceのパラメーターです。

Presenceはギターの音色の中でも高音域を担当し、おおよそ4~6kHzの部分に値します。

この部分がしっかり出ていると音抜けがよくなりますが、少ないとモヤっとした音になります。

しかし、出過ぎていると耳が痛いサウンドになりますので、ちょうどいいポイントを探すことが大切です。

この「ちょうどいいポイント」を探すには、Presenceだけではなく、Gainもセットで確認するとよいでしょう。

2:06~2:12

How To Fit Guitars In A Mix

この2つのパラメーター設定に苦戦したら、スピーカーを変えてみるのもよいでしょう。

IRを使ってみよう

最近では、インパルス・レスポンス(IR)を利用してキャビネットやスピーカーを変更できるプラグインもあります。
IR:機材、音響効果、再生システムなどが持つ音の特性をデータ化したもの。

たとえばJST社の「Toneforge」シリーズなどがあります。

おすすめプラグインを購入する

https://www.youtube.com/watch?v=Dy-2ygVaW7M

このようなIRを利用すると、理想の音を見つけやすくなります。

それでは、音の違いを聞き比べてみましょう。

2:32~2:47

How To Fit Guitars In A Mix

行き詰まったら音色を変えてみよう

アンプのパラメーターを変えてもなかなか曲になじまなかった場合は、思い切って別の音色に変えてみるのがおすすめです。

ツマミを少しずついじるよりも、音色をガラっと変えてしまった方がベストなサウンドを見つけるのが早いことも多いです。

ミックスの手順3.EQとコンプを使って調整する

音作りが終わったら、いよいよミックスに入ります。

ハイエンドとローエンドの処理

まずはEQでハイエンド(超高音域)とローエンド(超低音域)をカットします。

https://www.youtube.com/watch?v=Dy-2ygVaW7M

ローエンドは「ボンボン」「ウォンウォン」という音がするだけで、ギターにはあまり必要ない音域なのでカットします。

3:23~3:36

How To Fit Guitars In A Mix

ハイエンドはホワイトノイズのようなうるさい音域があるので、そちらをカットします。

3:38~3:47

How To Fit Guitars In A Mix

ミッドレンジ(中音域)の処理

ミッドレンジは、まずギターの音量を少し上げて、マスキングする楽器があるかどうかをチェックしましょう。

次は逆にギターの音量を下げて、どの楽器の音がよりよく聞こえるようになったかをチェックし、ギターがマスキングしている楽器を探します。

3:52~4:04

How To Fit Guitars In A Mix

今回の場合は、ギターの音量を上げるとスネア とベース(ミッドレンジ)がマスキングされることがわかりました。

逆に、ギターの音量を下げるとシンバルとキックがより多く聞こえるようになることがわかりました。

これらの情報をもとに、ギターのEQを調整していきます。

ベースのマスキング対策

まずはベースの高音域をマスキングしないよう、この部分だけを少し減らします。

https://www.youtube.com/watch?v=Dy-2ygVaW7M

このようにポイントを動かしながら、音の聞こえ方の違いを確認するとよいでしょう。

4:31~4:45

How To Fit Guitars In A Mix

ドラムのアタック音のマスキング対策

次はドラムのアタック音をマスキングしないよう、ドラムのアタック音よりも少し右側の高音域をEQでブーストします。

https://www.youtube.com/watch?v=Dy-2ygVaW7M

4:49~5:09

How To Fit Guitars In A Mix

スネアのマスキング対策

次はスネアのマスキング対策ですが、こちらはEQを使わずにサイドチェインを使います。

「スネアが鳴ったときはギターの音量を少し抑える」という処理になります。

ここでサイドチェインを強くかけすぎると、ギターの音量の変化が大きすぎて不自然になるため、音量の変化が少量で済む程度にしておきます。

https://www.youtube.com/watch?v=Dy-2ygVaW7M

今回のスネアの場合は低音域に対してマルチバンドコンプをかけ、スネアの低音域をマスキングしないようにします。

5:19~5:33

How To Fit Guitars In A Mix

500Hz付近のミッドレンジは要注意

ギターは特にギターやドラムのミッドレンジがかぶってしまうことが多く、マスキングの問題になりやすい周波数帯域です。

特に500Hz付近がたくさんあると音がモヤモヤしやすいので、必要であれば500Hz付近もEQで少し減らしてみましょう。

このようなとき、「ギターが聞こえにくいからEQでギターをブーストしよう」と考えるのではなく、「ギターを少し減らすことで、他の楽器を聞こえやすくできないだろうか?」と「引き算」で考えることが大切です。

https://www.youtube.com/watch?v=Dy-2ygVaW7M

例えばドラムとベースのミッドレンジを両方ブーストすると、このように音がモヤモヤします。

5:57~6:14

How To Fit Guitars In A Mix

今回の解説で使用したおすすめミックスプラグイン

最後に、今回の解説で使用したおすすめミックスプラグインをご紹介します。

どれもプロが利用する万能プラグインですので、まだお持ちでない方はぜひチェックしてみてください。

Pro-Q4(EQプラグイン)

Fabfilter社「Pro-Q4」を購入する(サウンドハウス)

最も有名なEQプラグインの1つです。

初心者からプロまで幅広いDTMerに愛されており、これを持っていない人はいないというレベルで万能です。

Pro-Qシリーズの使い方や実際の効果はこちらでご紹介しています↓

JST社「Toneforge Guilty Pleasure」

Toneforge Guilty Pleasure Doing What It Does Best!

ギターに使えるプラグインです。

今回の解説で登場したIRリバーブも使えます。

おすすめプラグインを購入する

Fabfilter社「Pro-MB」

Pro-MB(マルチバンドコンプレッサー)

Fabfilter社「Pro-MB」を購入する(サウンドハウス)

最も有名なマルチバンドコンプレッサーの1つです。

今回のように「スネアが鳴っている間は、ギターの中音域を抑える」という使い方ができます。

マスキング解消にも使えるため、持っていて絶対に損しないプラグインです。

Pro-MBの使い方や実際の効果はこちらでご紹介しています↓

ギターミックスのポイントまとめ

それでは、今回ご紹介したの5つのポイントをまとめてみましょう。

今回のポイント

  • はじめに演奏を整える(タイミングなど)
  • ギターの音色をベストな状態にしてからミックスを始める
  • IRを利用して曲になじむサウンドを作る
  • 聞こえにくいときは、足し算ではなく引き算で考えてみる
  • 「ギターが聞こえにくい原因は、ギター以外にあるかもしれない」と考えてみる

「いいミックス」は「バランスが取れている」とも言えます。

何かの音が大きすぎたり小さすぎたりせず、聞かせたい音がしっかり聞こえるように調整することが大切です。

当サイトでは他にもミックスに関するテクニックをまとめていますので、ぜひこちらもご覧ください↓


人気記事

1

今回は、主にポップスやダンスミュージックで使えるシンセサイザープラグインをご紹介します。いずれも世界的プロも愛用する人気プラグインですが、それぞれ特色が異なりますので、できるだけたくさん持っておくと目的に合った音作りがしやすくなります。まだ持っていないプラグインがあれば、ぜひチェックしてみてください!

2

https://youtu.be/bjqArFjaZLI 今回は、ジャズのスペシャリスト・Kevin Castroが解説する「ジャズの基本コード進行3つ」をまとめました。 ここでご紹介する3つのコード ...

3

今回は、大人気プラグインメーカーのCableguysが解説する「音にまとまりを出す方法4選」をまとめました。ボーカル、ギター、ベース、キーボード、ドラム...どれも1つ1つしっかり作っているのに、全体で聞くとなんとなくまとまりがなく、バラバラに聞こえる…こんなお悩みにお答えする「音にまとまりを出す方法」を4つご紹介します!

4

今回はChris Selimが解説する「1176コンプレッサーの使い方」をまとめました。 「有名なコンプレッサー」としてよく名前が挙げられる製品の1つが「1176コンプレッサー」です。この記事では、なぜこのコンプレッサーは世界中のDTMerに愛されているのか、その魅力と使い方を解説していきます。

5

今回は、Jonah Matthewsが解説する「サラウンドサウンドチャンネルの数字の意味とは?」をまとめました。映画を見るときや音楽を聞くとき、「5.1サラウンド」など「小数点の付いた数字+サラウンド」の文字を目にすることがあります。一体これは何を意味しているのでしょうか?

ファンクとは? 6

今回は、Antoine Michaudが解説する「Add9コードとMaj9コードの違い」をまとめました。どちらもコードネームに「9」が付いていますが、一体何が違うのでしょうか?「Add11とMaj11」「Add13とMaj13」の違いなども同様の考え方で見分けられます!

7

世界的にヒットしている曲の構成はどうなってる?ヒット曲の公式はある?今回はこのような疑問にお答えします。「曲を作るときはこれを使え!」と言うほど、多くの世界的ヒット曲に使われている楽曲構成をご紹介します。主に洋楽に使われている構成ですので、特に「世界中で自分の曲を聞いてもらいたい」という方はぜひ実践してみてください。

8

今回は、Universal Audio社が解説する「API 2500 Bus Compressorを使うコツ」をまとめました。コンプレッサーの中でも非常に有名なこの人気製品について、同社がリリースしているプラグイン版を使用しながら、このコンプレッサーを使いこなすためのコツをご紹介します。

9

今回は、Tim Heinrichが解説する「リバーブを削除する方法 ~5つのプラグイン~」をまとめました。前回はリバーブを除去する方法を4つご紹介しましたが、今回は「リバーブ除去専用プラグイン」をまとめています。機能も値段もプラグインによってさまざまですので、ぜひご自身に合ったプラグインを見つけてみてください。

大きいスピーカーを買った方がいいミックスができるのか?おすすめのスピーカーは? 10

今回は「大きいスピーカーを買えばいいミックスができるのか?」をまとめました。一般家庭の部屋に置くには大きすぎるサイズのものもありますが、プロになるのであれば大きいスピーカーを買わなければならないのでしょうか?言い換えれば、大きいスピーカーを買えば、いいミックスやマスタリングができるようになるのでしょうか?

-ミキシングのコツ
-, ,