用語解説

フランジャーとコーラスの違いとは?【DTM・エフェクト】

Flanger vs Chorus: What’s the Difference?

今回は、Audio Universityが解説する「フランジャーとコーラスの違い」をまとめました。

ギターやボーカル、シンセサイザーなどに使われるエフェクト「フランジャー」と「コーラス」ですが、実際に使ってみると非常に似ているように感じるでしょう。

この記事では、この2つのエフェクトの違いについて詳しく解説していきます。

フランジャーとコーラスの違いとは?

はじめに、フランジャーとコーラスの違いをまとめてご紹介します。

フランジャー

全く同じ2つの音を作り、片方のタイミングをほんの少しだけズラす

コーラス

全く同じ2つの音を作り、片方のタイミングとピッチを少しズラす

つまりこの2つは「元の音を複製し、片方のタイミングをズラす」という点では共通していますが、「タイミングのズレ具合」と「ピッチもズラすかどうか」が違います。

それでは、ここからは2つのエフェクトの原理・しくみについて解説します。

はじめに:波形と位相についてのおさらい

フランジャーとコーラスの違いを知るため、まず波形と位相についておさらいしましょう。

下記画像のように全く同じ波形が2つ合体すると、音量はそのまま大きくなります。

https://youtu.be/VPeqIxi-_2E?si=31rwP_h4HKLpVzXo

2つの波形がほんの少しだけズレた状態で再生すると「コームフィルタリング」という現象が発生します。

https://youtu.be/VPeqIxi-_2E?si=31rwP_h4HKLpVzXo

コームフィルタリングが発生すると、一部の周波数帯域で位相の打ち消しが発生してしまうため、少し音が変化します。

「サーッ」というホワイトノイズにコームフィルタリングを発生させた例

What is comb filtering?

上記の動画を見てみると、フランジャーやコーラスエフェクトをかけたときと同じような音に聞こえます。

つまり、フランジャーとコーラスに共通しているのは「位相をズラして音を変化させている」という点です。

そしてフランジャーとコーラスの大きな違いは、この「位相のズラしかた」にあります。

https://youtu.be/VPeqIxi-_2E?si=31rwP_h4HKLpVzXo

ちなみにコームフィルタリングは、上記画像のように一部の音だけ音量が下がります。

このグラフが髪をとかす櫛(くし)のように見えることから、コームフィルタリングという名前がついています。

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フランジャー系のプリセットを使った場合

このプラグインには「Pseudo-Flange」というプリセットがあるので、まずはこちらを聞いてみましょう。

1:13~1:37

Flanger vs Chorus: What’s the Difference?

こちらはディレイプラグインなのですが、ディレイで鳴らす音をズラしただけでフランジャーをかけたときのような音になりました。

「ヒュゥゥゥ」というホイッスルのような独特の音が特徴です。

それでは、このプリセットはどんな設定になっているでしょうか?

https://youtu.be/VPeqIxi-_2E?si=31rwP_h4HKLpVzXo

注目するべきパラメーターは、こちらの3つです。

Echo Time:ディレイ音を鳴らす間隔の大きさ
メインの音が鳴ってから何ミリ秒後にディレイ音を鳴らすか?

Wobble:メインの音の音量によってEcho Timeを少しだけズラす


Feedback:ディレイ音をどれだけ多く鳴らし続けるか
多いほどエコーの数が多くなる

このフランジャー系のプリセットでは、Echo Timeが最小で、Feedbackの量は少ないのが特徴です。

コーラス系のプリセットを使った場合

次は、「CE - 1 Chorus」というコーラス系のプリセットを選んでみましょう。

2:21~2:27

Flanger vs Chorus: What’s the Difference?

先ほどよりも「ヒュゥゥゥゥ」という風のような音はかなり減りました。

それでは、このプリセットはどんな設定になっているでしょうか?

https://youtu.be/VPeqIxi-_2E?si=31rwP_h4HKLpVzXo

Echo Timeは少し長く、Feedbackはゼロです。

Delay Timeを変化させるWobbleはフランジャー系プリセットのときと変わりません。

これを踏まえると、コーラスとフランジャーの違いを生み出しているのは「Echo Time」と「Feedback」であることがわかります。

つまり、音をズラす間隔と、ズラした音を鳴らす回数です。

そして実は、Echo Time(ディレイタイム)によってピッチも変化します。

ディレイタイムを変化させるとピッチも変化する

先ほど「注目するべきパラメーター」として「Echo Time」「Wobble」「Feedback」の3つを挙げました。

このうち、Wobbleはいま鳴らしている音の音量に合わせてわずかにEcho Time(ディレイタイム)を自動的に変化させるパラメーターです。

しかし、そもそもEcho Timeが変わるとどんな効果があるのでしょうか?

実際に聞いてみましょう。

3:54~4:06

Flanger vs Chorus: What’s the Difference?

Echo Timeを小さくするほど(間隔を狭めるほど)ピッチが高くなり、大きくするほど(間隔を広げるほど)ピッチが下がりました。

わずかではありますが、Echo Timeを小さくしたり大きくしたり変化させることで、ズラした2つの音をピッチでもズラし、音に変化を加えています。

タイミングもピッチもズレが大きい方が、より左右に広がりのあるサウンドになります。
フランジャーよりもコーラスの方がピッチの変化が大きいですが、フランジャーにもほんのわずかにピッチの変化があります。

フランジャーの起源は「2つのテープ」

そもそもフランジャーは、テープの時代から使われているエフェクトです。

全く同じ曲が流れる2つのテープを同時に再生し、片方のテープの「フランジ」を指で抑えることで、両者に微妙なズレを生み出していました。

2:17~2:40

Tape Flanging - How to do it

これをプラグインで手軽に行えるようにしたのが、DTMやギター演奏などで使われるフランジャープラグインです。

ディレイタイムを変えてもピッチが変化しないプラグインもある

例えばSoundtoys社の「EchoBoy」のEcho Timeにはいくつかモードがあり、そのうち「Noteモード」にすると、ディレイタイムを変更してもピッチに影響が出なくなります。

Noteモードの使用例(4:39~4:54)

Flanger vs Chorus: What’s the Difference?

Timeモードにすると、Echo Timeによってピッチが変化するようになります。

Timeモードの使用例(4:56~5:12)

Flanger vs Chorus: What’s the Difference?

このように、テープを使っていた時代のようにフランジャーやコーラスエフェクトを再現できるだけでなく、その効果を無効にもできるプラグインもあります。

ディレイプラグインとして使うこともできれば、フランジャー・コーラスエフェクトプラグインとしても使うことができ、とても便利です。

ギターのコーラスエフェクトの使い方

ギターでもコーラスエフェクトを使うことがあります。

主なパラメーターはこちらです。

LEVEL:元の音とエフェクトをかけた音の割合を調整する
ディレイプラグインにおける「MIX」や「Dry/Wet」と同じ
EQ:トーン(音色)のコントロール
RATE:数字を大きくするとうねりのスピードが速くなる
DEPTH:数字を大きくするとピッチが変化する音域の幅が広くなる

ギターにおけるコーラスエフェクトの使用例(5:42~6:32)

Flanger vs Chorus: What’s the Difference?

以上で解説は終了です。

フランジャーとコーラスだけでなく、フェーザーとも比較した解説はこちらの記事でまとめています↓

DTMや楽器演奏でよく使われる「リバーブ」の種類の解説はこちら↓

DTMや楽器演奏でよく使われる「ディレイ」の種類の解説はこちら↓


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