オーディオ

ミュージシャン・音楽好きのための耳栓の選び方【難聴予防】

Best Earplugs for Audio Engineers & Musicians

今回は、Audio UniversityのKyleが解説する「ミュージシャンとオーディオエンジニアのためにベストなイヤープラグ」をまとめました。

好きなアーティストのコンサートに行ったり自分でライブを開催したり、スタジオで音楽制作をしたりすると、大きな音を聞くことがあります。

特に若い人なら「まだ若いから特別な対策をしなくても大丈夫だろう」と思うかもしれませんが、実はそうではありません。

そこでこの記事では「なぜ音楽に携わる人がイヤープラグ・耳栓を使うべきなのか」「自分に合ったイヤープラグの選び方」をご紹介します。

イヤープラグ(耳栓)を選ぶときに注意するべきこと

大きな音から耳を守るために使われるのが、イヤープラグ(耳栓)です。

値段や特徴はさまざまで、ドラッグストアやスーパーで売っている数百円のものもあれば、プロ用で数万円以上する製品もあります。

しかし多くのイヤープラグは、耳を守ることはできても音質を損ねてしまうことが少なくありません。

このようなイヤープラグを使ってしまうと、ミュージシャンなら「もっと大きく演奏しなきゃ!」と勘違いしてしまったり、作曲家やミキシングエンジニア(MIX師)なら特定の音域だけ聞こえず、正しいバランスで曲を作れなくなります。

もちろん、単純に音楽を聞いて楽しむときもすべての音域をバランスよく聞くことができなくなります。

なぜイヤープラグ(耳栓)を使うと音質が悪く聞こえる?

なぜイヤープラグ(耳栓)を使うと音質が悪く聞こえるかというと、イヤープラグの中にはすべての音域を均等に減らしていない製品があるからです。

例えば、こちらのグラフをご覧ください。

https://youtu.be/ihif-XEL6XQ?si=ELrzMf3nIWg4FQIw

これは、とあるイヤープラグでどの音域をどれぐらい減らしているかを示したグラフです。

一番下の黒い線(FOAM)は、ドラッグストアで売られているようなスポンジタイプの安価な耳栓の数値です。

高音域(グラフの右側)がとても減らされているのに対し、低音域(グラフの左側)はさほど減らされていません。

このような製品を使ってしまうと、高音域だけ聞こえず、とてもバランスの悪い音に聞こえてしまいます。
EQで無理やり特定の音域だけ下げたような聞こえ方になります。

うるさい音から耳を守ることができるかもしれませんが、プロとして必要なクオリティで仕事ができなかったり、音楽を十分に楽しむことは難しいでしょう。

ミュージシャン・音楽好きのためのイヤープラグ(耳栓)の選び方

現代では、ミュージシャンのためのイヤープラグ(耳栓)が開発されています。

特定の音域だけ大きく音量を下げるのではなく、なるべく全体の音量を均等に減らすように設定されているため、もともとのバランスを崩さないまま音量を下げることができます。

そのため、ミュージシャンをはじめ音楽関係の仕事に携わる方や音質重視で音楽を楽しみたい方にはミュージシャン用のイヤープラグをおすすめします。

ここからは、おすすめのイヤープラグを「プロ用の高価なもの」と「安価で手軽に使える製品」との2パターンに分けてご紹介します。

プロ用でおすすめのイヤープラグ(耳栓)

ミュージシャンを始め、音楽制作に関わる方にとって最もいいイヤープラグは耳の型を取って制作するオーダーメイドタイプの製品です。

僕(Kyle)は毎年、専門機関に行って聴力検査をし、耳の型を取ってイヤープラグを作ってもらっています。

https://youtu.be/ihif-XEL6XQ?si=ELrzMf3nIWg4FQIw

シリコンベースの素材を使って型を取ったあと、その型の情報を取り込んで3Dモデルを作り、その人の耳にジャストフィットするように細かく形を調整します。

プロ用のイヤープラグの中には、フィルター機能がついていることもあります。

https://youtu.be/ihif-XEL6XQ?si=ELrzMf3nIWg4FQIw

例えば僕が非常に大きな音を鳴らす会場でミックスをするときは、20dBほど音量が下がるフィルター(上記グラフの赤線)を使います。

そこまで大きな音が鳴らない場所であれば、-14dB程度音量を下げられるフィルター(上記グラフの青線)を使います。

フィルターを変えるには、以下の画像のように小さなパーツをイヤープラグに付け替えるだけです。

https://youtu.be/ihif-XEL6XQ?si=ELrzMf3nIWg4FQIw

イヤープラグ(耳栓)に不満を感じた経験がある人ほど使ってほしい

コンサートに行って耳栓を使ったとき、「音の聞こえ方が変になるからイヤだ」と思って耳栓を使わなくなってしまう人もいるかもしれません。

しかし、それはその耳栓が自分に合わなかった、もしくは自分の好みの音で聞けなかっただけかもしれません。

耳栓を使わないままコンサートに通い続けてしまうと、ゆくゆくは難聴になってしまい、ますます音楽を楽しめなくなる可能性もあります。

お金や手間はかかるかもしれませんが、きちんと自分に合った耳栓を選べば、耳の健康を守りながら音質を損ねることなく音楽を楽しむこともできます。

安価でおすすめのイヤープラグ(耳栓)

「耳の型を取るような高価な製品には手が届かない…」という方は、数千円程度で購入できる製品がおすすめです。

ここでは、Etymotic社とCrescendo社のイヤープラグをそれぞれご紹介します。

安価でおすすめのイヤープラグ①Etymotic社

僕がいつもオーダーメイドのイヤープラグを作ってもらっている「Etymotic」という会社は、市販で買えるタイプの製品「ER20XS」と「ER20」を販売しています。

まずは安価な製品から試してみたいという方はぜひチェックしてみてください。

Etymotic社「ER20XS」

Etymotic社「ER20XS」は、後述する「ER20」よりも見た目が目立ちにくく、装着しても耳から飛び出しにくい設計になっています。

Etymotic社「ER20」

Etymotic社「ER20」は前述の「ER20XS」よりもステム部分が長いので、取り外しがしやすくなっています。

安価でおすすめのイヤープラグ②Crescendo社

Crescendo社では、シチュエーションに合わせた設計のイヤープラグを選ぶことができます。

例えばドラマーなら「Fcking Loud」、ライブに参戦する人や音楽鑑賞を楽しむ人は「Music20」、クラブなどでダンスミュージックを爆音で楽しむ人は「Dance」、睡眠用には「Sleep」、工事現場や工場で働く人用の「Industry」などがあります。
※例えば音楽鑑賞用の「Music20」では、音を20dB減衰させます

ぜひご自身の使用用途に合わせてご利用ください。

イヤープラグ(耳栓)は耳が悪くなる前に買うべき

イヤープラグ(耳栓)を購入するときに一番大切なのは、「耳が悪くなる前に買うこと」です。

下記の記事でも解説していますが、耳が受けたダメージは二度と治らないので、できるだけ早いうちから対策をする必要があります。

関連記事

「まだ若いから大丈夫」「まだ耳は悪くなっていないから必要ない」と思わず、耳が健康な今のうちに対策を始めることをおすすめします。


以上で「ミュージシャン・音楽好きのためのイヤープラグ(耳栓)の選び方」の解説は終了です。

当サイトでは他にもアーティストの健康や正しい音の聞き方に関する記事を掲載していますので、ぜひこちらもご覧ください↓


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