今回は、音楽プロデューサーのBthelickが解説する「なぜあなたのテックハウスはプロのように聞こえないのか?」をまとめました。
テックハウスと言えば、WestendやNoizu、Mau Pなどのアーティストが有名です。
しかし実際に自分で作ってみると、彼らのようなサウンドにならず悩んでいる方も多いでしょう。
そこでこの記事では、どのようにすればプロのようなテックハウスを作ることができるのか、そのコツを4つご紹介していきます。
テックハウスを作るコツ1.ベースは「スクウェア・タフ」
テックハウスで重要な楽器の1つが、ベースです。
このときにポイントになるのが、ベースをスクウェア・タフ(Square Tough)にすることです。
日本語にすると「真面目にきっちり」という意味になります。
上記画像は、ベースを16分音符の長さ+8分音符で刻んで打ち込んだものです。
ここで、打ち込む位置を少しズラしてみましょう。
オンビートではなくオフビートに、16分音符ウラに打ち込みます。
このようにするとシンコペーションのグルーヴになります。
確かにいいグルーヴだと感じるかもしれませんが、きっちり真面目なリズムにした方がテックハウスらしくなることがあります。
Square(真面目に)+Tough(きっちりと)
例えばボーカルを入れたとき、8分音符刻みのシンプルなベースにした方が、シャキっとしたグルーヴになります。
ボーカルも8分音符で刻むようなフレーズなので、ベースも同じようなフレーズにすると、両者がキレイにマッチして力強いビートになります。
ちょっとだけグルーヴ感を出す方法
もちろん、必ず真面目な8分音符刻みにしなければいけないというわけではありません。
シンコペーションさせる部分を作ることで、よりよいグルーヴになることもあります。
例えば1~2音だけタイミングをズラし、シンコペーションさせてみるとこのようになります。
このように、スクウェア・タフにするところもあれば、そうせずにシンコペーションさせるところも作ってみると、程よいグルーヴを作ることができます。
テックハウスを作るコツ2.フリジアンスケールを使う
テックハウスはダークな印象が強いジャンルですが、実はフリジアンスケールがよく使われています。
フリジアンスケールは、通常のマイナースケールのうち2番目の音をフラット(♭)にしたスケールです。
メジャースケールのうち2・3・6・7番目の音をフラット(♭)にしたスケール
使う音はマイナースケールとかなり似ていますが、少しだけ違うので、ダークでクールな雰囲気を作りやすくなります。
DJソフトウェアによくある間違いとは?
テックハウスはDJに使われることが多いジャンルですが、DJソフトウェアやDJ向けのサイトを使うときは1つ注意が必要です。
それは、DJソフトウェアはキー(調)を間違える可能性があるということです。
例えばDJソフトウェア「Serato」を使うとき、いま流している曲のキーを自動で検出して表示してくれる機能があります。
DJは複数の曲をミックスしてつなげるので、前後の曲のキーを一致させる必要があるためです。
このとき、DJソフトウェアは「メジャーキーとマイナーキー」の2択でしか表示しないことが多いです。
例えばCを基音(ルート音)するスケールは、CメジャースケールとCマイナースケール以外にも、CミクソリディアンスケールやCハーモニックマイナースケールなど、さまざまあります。
DJソフトウェアの自動キー判定機能を過信するのではなく、フリジアンスケールなどの他のスケールの可能性がないかどうかも確認しましょう。
テックハウスを作るコツ3.「4ノートルール」を使う
さまざまなテックハウスの曲を分析してみると、フリジアンスケールのうちこちらの4音がよく使われていることがわかります。
1、2、5、6
EフリジアンスケールならE、F、B、C
この4つの音を使いながらリズムや順番を変えると、このようなフレーズを作ることができます。
フリジアンスケールではなく、通常のマイナースケールを使うとこのようなフレーズになります。
たった半音の違いですが、スケールの2番目の音を♭にしたフリジアンスケールを使ったときの方が、よりダークな雰囲気になります。
なぜEフリジアンスケールを使う?
ちなみに、今回の解説でEフリジアンスケールを使っている理由は2つあります。
1つ目の理由は、すべての音が白鍵になるからです。
白鍵:ピアノの鍵盤のうち、白い鍵盤のこと
EフリジアンスケールはE・F・G・A・B・C・Dの7音で、黒鍵が1つもありません。
2つ目は、ベースの音がちょうどいい範囲に収まるからです。
ダンスミュージックでは重低音が重要になりますが、音程が低すぎると耳に届きづらくなり、音が高すぎるとベース(低音楽器)として認識されにくくなります。
サブベースは基本的に「40~50Hz=E~G」がベストとされています
これを考えるとEはちょうどいい音程なので、今回はEフリジアンスケールを使っています。
テックハウスを作るコツ4.アンチコードを使う
曲を作るときはコードを打ち込むことが多いですが、テックハウスでは「アンチコード」が使われることが多いです。
基本的に、コードを打ち込むときは下記画像のように「ルート音・3rd・5th」の3つを打ち込むことが多いでしょう。
(EマイナーコードならE・G・Bの3音)

https://youtu.be/WEVhjNcQ0Fk?si=H7hWJ8yyoC6Wct95
しかし、テックハウスでは3rdの音を削除し、ルート音と5thの音だけ残すことが多いです。
このように、ルート音と5thの音を鳴らしたコードを「オープンコード」や「パワーコード」と言います。
オープンコードの特徴は、3rdの音がないのでメジャーコードかマイナーコードかわからないという点です。
例えばCメジャーコードは「C・E・G」で、Cマイナーコードは「C・E♭・G」です。
異なるのは3rdの音だけなので、3rdの音を削除するとメジャーコードなのかマイナーコードなのかわからなくなります。
3rdの音でメジャーコードかマイナーコードかが決まるので、逆に3rdの音を削除すると、どっちつかずなミステリアスな雰囲気になります。
まさに、テックハウスのようなダークでクールな雰囲気を作りたいときはピッタリです。
このオープンコード(パワーコード)は、Padなど他のコード系楽器にも応用できます。
プロのようなテックハウスを作る方法まとめ
以上が「プロのようなテックハウスを作る方法」でした。
ポイント
- ベースは「スクウェア・タフ」
- フリジアンスケールを使う
- 「4ノートルール」を使う
- アンチコードを使う
今回登場したフリジアンスケールについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。
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