コード進行

映画「マトリックス」でも使われている「ポリコード」とは?【映画音楽の作り方】

What Is The Matrix Chord?

今回は、The Art Of Storytellingが解説する「マトリックスコードとは?」をまとめました。

映画「マトリックス」の映画で頻繁に出てくる「とあるコード」について、音楽理論を用いながら詳しく解説していきます。

「マトリックスコード」を聞いてみよう

映画「マトリックス」の冒頭で「ワーナーブラザーズ」のロゴと共にに出てくるのが、こちらのサウンドです。

Warner Bros. logo - The Matrix (1999)

サイバーパンクな印象がありますが、これはワーナーブラザーズの緑がかったロゴのおかげだけでなく、そのサウンドのおかげもあるでしょう。

とても不思議な響きでSFらしい、なんだか全く違う2つの世界のはざまにいるような気持ちになります。

これは一体なぜなのでしょうか?

「マトリックスコード」を分解してみよう

この冒頭部分では、大きく分けて2つのコードが鳴っています。

EmコードとCメジャーコードです。

0:56~1:04

What Is The Matrix Chord?

ピアノで言うと、左手でEmコード(E,G,B)、右手でCメジャーコード(C,E,G)を弾いているようなフレーズになっています。

両方とも非常にシンプルなコードで、この映画では2チームに分かれた金管楽器で交互に演奏されています。

1:15~1:22

What Is The Matrix Chord?

共通音が多い2つのコードを使っている

このEmコードとCメジャーコードを分解すると、共通している音が2つあります。

Emコード:E,G,B

Cメジャーコード:C,E,G

共通している音:E,G

音は6つ鳴っていますが、音程にすると「C」「E」「G」「B」の4音しか使われていません。

1:44~1:55

What Is The Matrix Chord?

しかし面白いことに、「C,E,G,B」と同時に弾くと違和感がありませんが、EメジャーコードとCメジャーコードを別々に弾くと、両者は相性の悪い、全く別のコードに聞こえます。

そしてそれゆえに、なんだかとても不安定で不思議なサウンドに聞こえます。

このように、ある程度の距離を保って同時に2つ以上のコードを使うことを「ポリコード」と言います。

ポリコードとは?

ポリコードとは、同時に2つ以上のコードを鳴らして作られたコードです。

今回は「Eメジャーコード」と「Cメジャーコード」を別々に重ねるようにして演奏するポリコードになります。

ポリコードを使うと、1つの世界から別の世界へ行くような不思議さや浮遊感、不安定感が出ます。

例えばジョン・ウィリアムズが作曲したスターウォーズの楽曲でも、このポリコードが使われています。

2:30~2:38

What Is The Matrix Chord?

わかりやすくピアノで弾くと、「Fメジャーコード」と「Bメジャーコード」の組み合わせです。

2:38~2:45

What Is The Matrix Chord?

FメジャーコードとBメジャーコードは、あまり相性のよさそうなコードには聞こえません。

しかし、映画音楽ではさまざまな感情や環境、ストーリーを音で表現する必要があるので、逆にこのような組み合わせが使えることがあります。

他にも、物語が進んで主人公・ネオがビルからビルへ飛び移るシーンでは、より不協和音のようなポリコードを使っています。

5:25~5:33

What Is The Matrix Chord?

こちらのシーンでは、FメジャーコードとEメジャーコードの組み合わせが使われています。

さらに、ヒロイン・トリニティがネオへの愛を告白し、目を覚さない彼を起こそうとするシーンでは、BbメジャーコードとF#メジャーコードのポリコードが使われています。

5:37~5:53

What Is The Matrix Chord?

そしてこちらのシーンでは、コード同士の距離を狭め、少しかぶるようにして不思議な空気を作っています。

5:57~6:08

What Is The Matrix Chord?

最後にネオがエージェント・スミスを倒すシーンでは、今までのような不協和音はありません。

6:11~6:23

What Is The Matrix Chord?

これは、ネオの中にある自分への疑念や違和感がなくなったからです。

ストーリーやテーマを表現している映画音楽

映画「マトリックス」は、現実と仮想現実が交差する世界のお話です。

主人公・ネオは「この世界は何かがおかしいが、何がおかしいのは説明できない」という状況で日々の生活を送っています。

この「言葉にできない違和感」は、まさにこのポリコードも表現しているのではないでしょうか。

実際に、最後にエージェント・スミスを倒して今までの疑問や違和感がなくなったシーンでは、ポリコードが使われなくなっています。

ちなみに映画「マトリックス」の楽曲はDon Davis氏が作曲しており、作曲家としては「ジュラシックパークIII(2001)」や「東京グール(2017)」、オーケストレーターとしては「タイタニック(1997)」や「トイストーリー」シリーズも手がけています。

興味のある方は、ぜひこれらの作品もご覧ください。

映画「マトリックス」でも使われている「ポリコード」まとめ

以上が映画「マトリックス」でも使われている「ポリコード」の解説でした。

ポリコードとは?

同時に2つ以上のコードを使用すること

相性がよくなさそうなコードの組み合わせだからこそ、映画のストーリーやキャラクターの心情を表現できることもある

当サイトでは他にも映画音楽に使えるテクニックをまとめていますので、ぜひこちらもご覧ください↓


人気記事

1

今回は「FLUX:: Pure Analyzer Systemの使い方」をまとめました。このプラグインは、世界中の音楽プロデューサー・DTMerに愛用されているアナライザープラグインです。とてもキレイな見た目をしていますが、いったいどのようなプラグインで、どのように活用すればいいのでしょうか?

2

今回はCableguys社「ShaperBox3」を使うコツをまとめました。実際にBig ZがCableguys社「ShaperBox3」をどのように活用しているのか、おすすめの使い方を5つご紹介します。

3

今回は、Doctor Mixが解説する「歴代のシンセサイザーTOP10」をご紹介します。みなさんがよく耳にする「あの音」は、実はこれらのシンセサイザーの音かも…!?「聞いたことある!」「あの音って、このシンセの音だったんだ!」と驚くこと間違いなしです!

4

今回は、DTMでおすすめのオーケストラ系楽器がすべて使える音源をまとめました。1つ購入するだけで弦楽器・金管楽器・木管楽器・打楽器すべてが揃うだけでなく、世界中のプロが愛用する高品質の製品ばかりですので、まだお持ちでない方はぜひチェックしてみてください。

ファンクとは? 5

今回は、Antoine Michaudが解説する「Add9コードとMaj9コードの違い」をまとめました。どちらもコードネームに「9」が付いていますが、一体何が違うのでしょうか?「Add11とMaj11」「Add13とMaj13」の違いなども同様の考え方で見分けられます!

6

今回はFabfilterが解説する「ドラムミックスに使えるサイドチェインのコツ」をまとめました。例えばドラム全体をまとめたグループをミックスするとき「スネアの高音域を足したいけど、シンバルとハイハットの高音域は足したくない」ということがあるでしょう。そんなときPro-MBを使えば、スネアの高音域だけをブーストできます!

7

当サイトのnoteアカウントにて「楽曲のサビ・Aメロ・Bメロ・Cメロ・ポストコーラス・イントロ&アウトロの作り方」をそれぞれアップしました。 「曲を作るときに何から始めたらいいかわからない」「 ...

8

今回は、主にポップスやダンスミュージックで使えるシンセサイザープラグインをご紹介します。いずれも世界的プロも愛用する人気プラグインですが、それぞれ特色が異なりますので、できるだけたくさん持っておくと目的に合った音作りがしやすくなります。まだ持っていないプラグインがあれば、ぜひチェックしてみてください!

9

今回は「スピーカーは縦置き or 横置きのどちらがいいのか?」をまとめました。 多くのスピーカーは正方形ではなく長方形であることが多いですが、縦置きにするべきか、横置きにするべきか悩む方も多いでしょう ...

-コード進行