今回は、有名ドラムヘッドメーカーEVANSが解説する「バスドラムのチューニングの仕方」をまとめました。
バスドラムのチューニングをする前に知っておきたいことと、実際のチューニング方法をご紹介します。
バスドラムのチューニングをする前に知っておきたい2つのこと

バスドラムにおいて、チューニングは音のトーンを決める非常に重要な作業です。
そのため、チューニングの基本を押さえ、どのような工夫をするとどのような音になりやすいかを知っておくと理想の音を作りやすくなります。
そのため、まずはバスドラムのチューニングにおいて知っておくと役に立つ情報を2つご紹介します。
1.チューニングの基本は「すべて均等」
バスドラムは基本的にすべてのボルトが同じ強さで均等に絞められていることが重要です。
ヘッドの端を叩いたとき、どこを叩いても同じピッチ(高さ)になるようにしましょう。
バラつきが出ないよう、対角線上にあるボルトを同じ強さで回すのがポイントになります。

また、どれぐらいのチューニング具合(ボルトの締め具合)がいいかどうかは、その人の好みや楽曲によります。
「均等にボルトを締める」「どのボルト付近を叩いても同じピッチになるようにする」という点に注意しながら、自分好みのサウンドを追求していきましょう。
「ボルトを何周分締めればOK」という正解はありませんので、試行錯誤してくことが大切です。
2.音は2つのヘッドの締め具合で変わる
フロントヘッド(ビーターが当たる方)とスネアサイドヘッド(ビーターが当たらない方)でチューニングを変えると、音が異なります。
主にフロントヘッドは「アタック感とピッチ」、スネアサイドヘッドは「トーンとサステイン」を主にコントロールします。
フロントヘッドのチューニングを低くするとヘッドが少し緩んでパンチのあるサウンドになり、高くするとヘッドがピンと張って高くやわらかい音が出やすくなります。
スネアサイドヘッドのチューニングを低くするとトーンが高く、チューニングを高くするとより低音が出やすくなります。
「チューニングを低くすれば低い音が出る」と思いがちですが、必ずしもそうではないため注意が必要です。
チューニングの仕方に正解はない

バスドラムだけでなく、スネアやタムなどチューニングを必要とする太鼓類において、チューニングの正解はありません。
みんなそれぞれ違ったルールや方針を持ってチューニングをしており、好みも人それぞれです。
だからこそ「その人らしいサウンド」が生まれるとも言えます。
そのため、ここでは一般的にベーシックと言われるチューニング方法をご紹介しますが、必ずしもこのやり方に従わなければいけないというルールはありません。
おおよそのやり方が掴めてきたら、ぜひ自分好みのチューニング方法を見つけてみてください。
バスドラムのチューニングの仕方
それではここからは、バスドラムのチューニングの仕方をご紹介します。
フロントヘッド→スネアサイドヘッドの順にチューニングするのが一般的です。
チューニングの手順1.ヘッドを付ける前にシェルのエッジをキレイにする

シェルのエッジ部分は、ヘッドと直接接触する部分です。
ヘッドとエッジの接触の仕方によって音が変わるため、この接触部分にゴミが溜まっていると本来の魅力を発揮させることができません。
また、一度ヘッドを付けてしまうと次に取り外すまでエッジ部分のクリーニングはできません。
そのため、ヘッドを付ける前にクロスなどで軽くエッジを拭き取るようにしましょう。
チューニングの手順2.シェルに対してヘッド→フープの順に取り付ける

ヘッドにロゴや絵柄が描かれている場合は、実際に床に置いたときのロゴ・絵柄の向きも考慮してヘッドを取り付けるとよいでしょう。
もし毛布やマフラーをシェルの中に入れておきたい場合は、中に入れてからヘッドとフープを取り付けましょう。
特にヘッドにポートホール(穴)をあけていない場合は後から入れることができないため、注意が必要です。
ポートホールの意味とあけ方はこちら🔻
チューニングの手順3.ボルトを手で取り付ける

正しい位置にセットした後、ボルト(チューニングキーを使って回す金属のパーツ)を手で軽く締めて動かなくなるぐらいまで締めておきます。
チューニングの手順4.同じ強さで対角線上のボルトを同時締める

両手で同時に対角線上にあるボルトを同じ強さで、同じ分だけ回します。
例えば10個ボルトがある場合は、下記画像の順番で締めていくと近くのボルトの締め具合に影響されにくく、均等にチューニングしやすくなります。

「1/4周分」「半周分」など、回す範囲を具体的に決めておくとベターです。
バスドラムは基本的にすべてのボルトが同じ強さで均等に絞められていることが重要なので、バラつきが出ないよう、対角線上にあるボルトを同じ強さで回すのがポイントです。
まずは手でボルトを締め、足りなければチューニングキーを使ってさらに締めます。
はじめは「ヘッドにシワがなくなるまで」を目安に締め、足りなければ少しずつ締め足していきましょう。
おすすめのチューニングキーは記事の最後にご紹介します。
チューニングの手順5.均等にチューニングできているか確認する

すべてのボルトを一通り締め終わったら、次は均等にチューニングできているかチェックします。
指やフェルト製のマレットなど、なるべくやわらかいもので各ボルトの近く(ヘッドの縁から5cm程度離れた場所)を叩き、ピッチが同じになっているか確かめましょう。
※ドラムスティックなどアタック音がはっきり出やすいものを使うと、音程よりもアタック音が目立って聞こえにくくなります。やわらかい素材のものを使うことをおすすめします。
チューニングの手順6.フロントヘッドが終わったら、スネアサイドヘッドをチューニングする
フロントヘッド(バターヘッド)のチューニングが終わったら、スネアサイドヘッド(レゾヘッド)のチューニングを同じ手順で行います。
フロントヘッドとスネアサイドヘッドのそれぞれのチューニング具合でサウンドが異なりますので、どちらをどれぐらい締めるかどうかを試行錯誤してみましょう。
ヘッドにシワができたらどうする?

チューニングをしていると、ヘッドの外周にシワが見えることがあります。
気になる場合はもう少し締めるとシワがなくなりますが、チューニングが適切に行われていて、特に見た目が気にならない場合はそのままにしても構いません。
ジャンルや曲調によってチューニングを変える例
ジャンルや曲調によってチューニングやセッティングを変えると、さらに理想的な音に仕上げることができます。
例えば下記の動画では、同じドラムセットでチューニングとマイクを変えてジャンルに合ったサウンドにしています。
クラシックロック
広がりのある程よいピッチにしたいので、バスドラムのスネアサイドヘッドはフロントヘッドよりも少し高めにし、毛布などを入れてミュートし、少しタイトな音にする。
ジャズ
すべての楽器のチューニングを少し高めにし、バスドラムとスネアはミュートをする。
インディーロック・フォーク
全体的に低めのチューニングにし、スネアはかなり強めにミュートをし、バスドラムとタムは少しミュートをし、ダークでドライなサウンドにする。
70年代の洋楽風
太鼓類はすべて強めにミュートをし、バスドラムはスネアサイドヘッドを外してミュートをし、とにかくタイトな音にする。
モダンロック
全体的に中ぐらい~少し低めのチューニングにし、バスドラムとスネアは程よくミュートをしてパンチを出す。
ドラムヘッドは押して伸ばすべき?


バスドラムやスネアのヘッドを新品に変えるとき、「ヘッドをセットした後にヘッドの中心を手で押して伸ばす」というテクニックが使われることがあります。
ヘッドの中心を手で押すとヘッドが伸び、ならすことができるので、ヘッドの柔軟性が上がるメリットがあります。
柔軟性がないまま数時間叩き続けるとすぐピッチが下がってしまったり、チューニングを高くしすぎると強く叩いた時に破れてしまうリスクがあります。
(例えば新品交換直後にライブを行うと、ライブ中にチューニングがどんどん低くなる可能性もあります)
しかしこれはドラマーによって意見が大きく分かれており、「全くやらない」「毎回やる」という人もいれば、「メーカーによってヘッドの状態が異なるので、メーカーによってやる・やらないを決めている」という人もいます。
頻繁に強くやりすぎるとヘッドの寿命が短くなってしまうデメリットもありますので、必要であれば行いましょう。
ちなみに、ヘッドを伸ばしながら同時にチューニングを行う方法もあります。
ヘッドを伸ばしながらチューニングする手順
- ボルトを取り付ける
- ボルトを手で回して動かなくなるぐらいまで締める
- ヘッドの中心を手で軽く押し、対象のボルト付近にシワがなくなるまでボルトを締める
- シワがなくなったらボルトを緩め、シワが少しだけ見えるぐらいまで戻す
- 3を全てのボルトに対して行う
※押すとどの箇所も同じぐらいシワが出て、手を離した時にシワが見えなくなるぐらいの張り具合がベスト - 好みの高さまでチューニングをする
ヘッドを常に押しているのが大変な場合は、ヘッド中央におもりを乗せておくのもOKです。

おすすめのドラム用チューニングキー
ドラムのチューニングキーにはさまざまなタイプがあります。
最もシンプルなタイプは数百円、高くても数千円程度で購入できますので、ぜひお好みのタイプを見つけてみてください。
YAMAHA DK15

スタンダードなチューニングキーです。
上部に穴が付いているので、ストラップ等を通して紛失防止することもできます。
TAMA DH7

5mmの六角レンチも付いている便利なチューニングキーです。
PEARL K-029

スピーディーにボルトを回すことができるタイプのチューニングキーです。
DRUMCLIP MAGNAKEY

本体に磁石がついているので、フープやスタンドなど金属部分に付けておくことができます。
マグネットは強力なので、ドラムを叩いてもカタカタ揺れにくくなっています。
VIC FIRTH VIC-KEY2

持ち手が長いので、よりボルトを強く締めやすくなっています。
WINCENT W-RKP ROCKKEY PRIME

ボトルオープナー付きのチューニングキーです。
ドラムを叩く前・後にビンを開けて一杯楽しみたい人におすすめです。
ROBOKEY 4X

通常の4倍速で回せるチューニングキーです。
特にヘッドを張り替えるときなど、一気に緩めたいときに便利です。
REMO QUICKTECH DRUM KEY
ネオジム磁石が内蔵されているため、ボルトを緩めた時も落下する心配がありません。
上部にはゴムが付いているので、指で回すときも滑りにくくなっています。
また電動ドライバーに装着することもできるので、ヘッド交換時もストレスフリーです。

EVANS DATK Torque Key
トルク調整機能付きのチューニングキーです。
設定した張り具合に到達すると自動で空回りし、張り具合の設定幅も調整できます。

TAMA TW100 テンションウォッチ
ヘッドの張力を計測できるアイテムです。
チューニング具合を数字でメモすることができるので、同じチューニングを再現しやすくなります。

以上で「バスドラムのチューニングの仕方」の解説は終了です。
バスドラムの選び方やセッティング方法についてはこちらの記事で解説しています🔻
そのほか、ドラムセットに関わるテクニックや知識はこちらでまとめています🔻