
今回は「よく使われるドラムヘッド10種類の特徴」をまとめました。
ドラムに使われるバスドラム・スネア・タムは、打面=ヘッドによって音が大きく変わります。
ここでは、ドラムヘッドの中でも特に有名なヘッド10種類の特徴を解説していきます。
ドラムヘッド10種類の特徴
はじめに、今回解説するドラムヘッド10種類の特徴をまとめてご紹介します。
シングルプライ
フィルム1枚で作られており、明るい音が出やすい
ダブルプライ
フィルム2枚で作られており、重みがある音で耐久性が高い
コーティングヘッド・クリアヘッド
コーティングは丸く倍音が抑えられ、クリアは倍音が多く響きが長い
コントロール(ブラックドット)
倍音を出すことも抑えることもでき、パンチがあり、耐久性が高い
ピンストライプ
倍音が抑えられ、耐久性がありパンチのある音が出やすい
パワーソニック
明るさ・アタック・低音が際立つ音が出やすい
スエード
やわらかく温かみがありながら、音抜けがいい音が出やすい
ハイドロリック
耐久性が高く、サステインが短くアタックがはっきりしている音が出やすい
スキン
やわらかく温かみのあるサウンドが出やすい
メッシュ
消音性に優れており、練習用として最適
それではここからは、これら10種類のヘッドを1つずつ解説していきます。
スネアヘッドの選び方と特徴1.シングルプライ
はじめにご紹介するのは、「シングルプライ」というタイプのヘッドです。
プライ(Ply)とはヘッドに使われるフィルムの層のことで、シングルプライの場合はフィルムが1枚(1層)になっています。
フィルム1枚あたりの薄さにはそれぞれ「ディプロマット」「アンバサダー」「エンペラー」という名前がついています。
ディプロマット:薄め(1プライ約0.7ミル=約0.01778 ミリ)
アンバサダー:中ぐらいの薄さ(1プライ約1ミル=約0.0254 ミリ)
エンペラー:厚め(1プライ約1.4ミル=約0.03556 ミリ)
シングルプライのヘッドは明るい音が出やすいので、強く叩かなくても明るくオープンな印象にすることができます。
そのため、ジャズやポップロックなどに向いています。
スネアヘッドの選び方と特徴2.コーティングヘッド・クリアヘッド
ドラムヘッドは、文字通りヘッドがコーティングされた「コーティングヘッド」と、コーティングされていない「クリアヘッド」の2種類に分けることができます。
コーティングヘッド
- ヘッドが白or黒色になっていることが多い
- 音が響きにくいため、温かみのある音が出やすい
クリアヘッド
- ヘッドが透明でシェルの中が透けて見える
- アタック(パンチ)が強く、倍音も多く含まれる
一般的には温かみのある音が求められることが多いため、コーティングヘッドの方が多く使われる傾向にあります。
また、ジャズでよく見られるドラムブラシを使う場合、ヘッドとの摩擦がないとブラシの音が出ないため、ブラシを使う場合はコーティングの方がよいでしょう。
スネアヘッドの選び方と特徴3.ダブルプライ
次にご紹介するのは、「ダブルプライ」というタイプのヘッドです。
ダブルプライはヘッドのフィルムが2層になっており、全体に厚みがあるため、低音域が出やすく倍音はシングルプライに比べて少し少なめです。
ダブルプライの魅力は、シングルプライに比べて厚いので耐久性が高いことです。
そのため、ロックやメタルなど激しく叩くジャンルに向いています。
スネアヘッドの選び方と特徴4.コントロール(ブラックドット)
次にご紹介するのは、「コントロール」というタイプのヘッドです。

名前の通りヘッドの中心に黒い円形のフィルム(ブラックドット)が張られているタイプで、余分な倍音がカットしやすく、耐久性も高いです。
フィルムが貼られているのは中心部分だけなので、外側(リム側)を叩くと倍音をしっかり出すことができます。
そのため、耐久性が高く倍音もしっかり出したいときにおすすめです。
スネアヘッドの選び方と特徴5.パワーストローク
次にご紹介するのは、「パワーストローク(PowerStroke)」というタイプのヘッドです。

例えば REMO社の「PowerStroke 3」というヘッドの裏を見てみると、フチの部分に薄いフィルム=リングミュートが付いています。
このようにリングミュートが内蔵されているドラムヘッドは音の響き(サステイン、長さ)が短くなるので、パッと音が止まるようなずっしり重いサウンドを作るのに向いています。
ちなみに、スネアの上に置いて使うリングマフラー(ミュートリング)というアイテムもあります。
いつでも取り外しができるので便利です。
ドラムヘッドの選び方と特徴5.ピンストライプ
次にご紹介するのは、「ピンストライプ(PinStripe)」というタイプのヘッドです。
外周の少し内側に黒い輪っかがあるのが特徴的です。
これは「ダンプニングエージェント」と言って、少しだけ倍音を抑えるコーティングです。
このヘッドはダブルプライなので、2つのプライ(層)の間にダンプニングエージェントのコーティングを施しています。
ダブルプライで倍音を抑えるので、耐久性とパンチのあるサウンドが欲しいときにおすすめです。
ドラムヘッドの選び方と特徴6.パワーソニック
パワーソニックは明るさ・アタック・低音を重視したタイプのヘッドです。
バスドラムを連打したり、パンチと重低音が重視されるメタルなどに向いています。
ドラムヘッドの選び方と特徴7.スエード
スエードは、スエード加工がしてあるタイプのドラムヘッドです。
スエード加工:皮をサンドペーパーなどで摩擦し起毛させる方法
スエード加工している靴を見かけたことがある方も多いと思いますが、このように完全にツルツルではなく少しザラつきはあるものの、触り心地はなめらかになっています。

やわらかく温かみのあるサウンドでありながら、音抜けはしっかりしているので、R&Bややさしめのポップス・ロックなどに向いています。
ドラムヘッドの選び方と特徴8.ハイドロリック

ハイドロリックは、2枚のフィルムの間にオイルを挟めたヘッドです。

2プライヘッドですが、間にオイルを挟んでいるのでサステインが短くアタックがはっきりしており、耐久性が高いのが特徴です。
70年代のロックやディスコ系の楽曲に向いています。
EVANS社のハイドロリックヘッドはカラー展開が豊富でレッド・ブルー・ブラック・クリアの4種類ありますが、色によって音が異なるわけではありません。

しかし、特にレッドやブルーは見た目が派手なため、カメラで抜かれたときもステージ映えし、ドラマー自身も楽器の視認性が上がり、気分も上がるのがポイントです。
ドラムヘッドの選び方と特徴9.スキン(カーフトーン、ファイバースキン)
スキン系のドラムヘッドは、本皮のような質感を再現したドラムヘッドです。
「カーフトーン」「ファイバースキン」などと記載されているタイプです。
(カーフ=Calfは「子牛」「子牛の皮」という意味があります)
現代では本皮をそのまま使っているわけではなく、プラスチックなどの素材を使って特殊な加工をしているので、より安価で生産しやすく気温や湿度にも影響されにくいメリットがあります。
とてもやわらかく温かみのあるサウンドになるため、ジャズやクラシックロック、ヴィンテージ系のサウンドが欲しいとき、オーケストラで使うコンサートバスドラム(グランカッサ)などにおすすめです。
ちなみにこのタイプは摩擦が起きやすいので、ジャズのブラシにも向いています。
ドラムヘッドの選び方と特徴10.メッシュ
メッシュ素材でできたヘッドで、消音性に優れているタイプです。
練習用に最適で、電子ドラムなどによく使われています。
後ろにあるものが透けて見えるほど細かい穴がたくさん開いているため、耐久性が心配になるかもしれませんが、消耗を防ぐパッチが付いている製品もあります。

おまけ:ドラム用ミュート付きヘッド
ドラムヘッドには、着脱可能なミュートを搭載したタイプのヘッドもあります。
程よくミュートをしてパンチのあるサウンドにしたい方や、なるべく大きな音を出したくない方、練習用のヘッドをお探しの方におすすめです。
EVANS社「SoundOff」シリーズ
EVANS社の「SoundOff」シリーズは、通常のドラムヘッドの上にそのまま置くだけで消音ができるタイプのミュートです。
ヘッドを取り外さなくてもミュートができるので、とても便利です。
ウレタンマット付きヘッド
EVANS社「EMAD2」は、ヘッドを取り外さなくても着脱可能なウレタンミュートリング(ダンピングリング)が付属しています。
幅が異なる2種類のミュートリングが付属しているため、ミュートリングの使い方でミュートの度合いを細かく調整できます。
ミュートを完全に取り外すと通常のクリアヘッドになりますので、オープンなサウンドが欲しいときはミュートを取り外し、パンチがあり音抜けがいいタイトな音が欲しいときはミュートを装着するとよいでしょう。
10種類のスネアヘッドを一気に比較!
それでは最後に、今回ご紹介した10種類のヘッドをまとめて比較した動画をご紹介します。
今回は同じシェル(本体)、同じチューニング(ピッチ)、同じスティック、同じマイクを使って録音していますので、ヘッドだけでこれだけ大きな違いがあることに驚いた方も多いでしょう。
ここで解説した特徴を参考にしながら、ぜひお気に入りのヘッドを見つけてみてください。
以上が「ドラムヘッド10種類の特徴」でした。
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