ミキシングのコツ

【DTM】EQだけで太く、深く、広がりのあるサウンドにするためのミックステクニック

2 Steps To Wider, Deeper And Fatter Mixes With Marc Daniel Nelson

今回は、Marc Daniel Nelsonが解説する「2ステップでより太く、深く、広がりのあるサウンドにするためのミックステクニック」をまとめました。

使うのはEQだけ、しかもたったの2ステップでできるテクニックですので、初心者から上級者の方まで、ぜひマスターしてください!

EQだけで太さ・深さ・広がりを出すためのポイント

今回はEQだけで太さ・深さ・広がりを出すためのコツをご紹介します。

ポイントとなるのは「MS(Mid & Side)」です。

これは音を「中央から聞こえる音(Mid)」と「左右から聞こえる音(Side)」に分けて処理をする方法で、「MS処理」などと呼ばれます。

MS処理は多くのプロが実践しているミックステクニック

僕(Marc)はこのテクニックを10〜15年ぐらい前に学び、「高音域は左右に配置し、低音域はブーストして中心に配置する」と教わりました。

こうするとEQのカーブの形がニッコリした口のようになりますが、センターの音が太くなるので全体が締まった音になり、サイドの高音域が少しだけ強調されます。

By Binksternet - Own work, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=5007662

多くのマスタリングエンジニアも、このような処理を行っています。

これは難しいテクニックではなく、EQという誰もが使えるプラグインだけでできるテクニックですので、ぜひ実践して頂きたいと思っています。

MS処理をした楽曲の例

今回は、Tyler Fortierの「I don’t want to forget」という楽曲を例に解説していきます。

この曲では、MS処理をマスター(ステレオアウト)、アコギ、ドラム(キック)に使いました。

まずは、楽曲をお聞きください。

1:32~1:54

2 Steps To Wider, Deeper And Fatter Mixes With Marc Daniel Nelson

マスター(ステレオバス)にかけたEQの例

マスターには、このようなEQをかけています。

https://www.youtube.com/watch?v=y8NFpMlhJOo

このFabfilter社「Pro-Q3」はMS処理をすることができ、左側の低音域にある緑のバンドは中心の音に対してかかっているEQ、右側の高音域にある青いバンドはサイドの音に対してかかっているEQです。

高音域のEQの仕方

わかりやすいように、高音域だけ聞いてみましょう。

2:22~2:43

2 Steps To Wider, Deeper And Fatter Mixes With Marc Daniel Nelson

10kHz以上の高音域は基本的に左右から聞こえ、それ以下の音は中心から聞こえるようにしています。

それでは次に、左右にあった高音域の音を中心にまとめて聞いてみましょう。

3:12~3:20

2 Steps To Wider, Deeper And Fatter Mixes With Marc Daniel Nelson

3dB程度しか足していませんが、これだけでも充分に左右の高音域を増強することができます。

低音域のEQの仕方

低音域は、中心から聞こえる音(MId)の音だけ増強するようにしています。

バイパス時と聞き比べてみましょう。

3:52~5:01

2 Steps To Wider, Deeper And Fatter Mixes With Marc Daniel Nelson

このように低音域と高音域をそれぞれMS処理することで、聞いたときに自分の周りを音がバランスよく取り巻いているようなサウンドになりました。

アコギにかけたEQの例

次は、アコースティックギターにかけたEQを見てみましょう。

5:32~6:41

2 Steps To Wider, Deeper And Fatter Mixes With Marc Daniel Nelson
https://www.youtube.com/watch?v=y8NFpMlhJOo

サイド(右側の青いバンド)を3dBだけ増やしていますが、バイパス時と比べると広がりに違いが出ていることがわかります。

ドラムにかけたEQの例

キックが中央で鳴っているので、ドラムのバスにも同様のEQをかけています。

6:42~7:02

2 Steps To Wider, Deeper And Fatter Mixes With Marc Daniel Nelson
https://www.youtube.com/watch?v=y8NFpMlhJOo

バイパス時と聞き比べてみると、キックが一歩前に出ているように聞こえるようになりました。

ほんの数dBでミックスに太さ・深さ・広がりが出る

このように、EQを見るとほんの数dBの違いで、音を聞いてもわずかな差かもしれませんし、僕も毎回この処理をするわけではありません。

しかし、これをするのとしないのとでは、やはり音に太さ・深さ広がりに違いも出ますし、その変化のおかげで楽曲に動きや音像の違いも出てくるので、とても重要なテクニックです。

「ほんの少しの差」でもいい

特に長時間作業をした後は音に慣れてしまうので、「ものすごくいい音になった!」と思ったときも、時間を置いてから聞くと「そんなにいい音でもなかった」と思うことがあります。

このように音に慣れてしまった状態で「100%が200%になった!」と思うぐらい劇的な変化をつけると、それだけ後から聞き直したときのリスクも高まります。

時によっては、その大きな変化がミックスを台無しにしていることもあります。

そのため、「ちょっとの変化」ぐらいに留めておくのもよいでしょう。

後から聞いたときにたったの15%でも「いい音」になったのであれば、それはとてもいいことですので、今回のように「ほんの少しの差」でも良いのです。

EQだけで太く、深く、広がりのあるサウンドにするためのミックステクニックまとめ

以上が「EQだけで太く、深く、広がりのあるサウンドにするためのミックステクニック」でした。

・MS処理(Mid & Side)が最大のポイント
・Midは「低音域〜中低音域」
・Sideは「中音域〜高音域」
・ほんの数dBでも大きな変化が出る

当サイトでは他にも音に広がりやパンチを出すためのテクニックをご紹介していますので、ぜひこちらもご覧ください↓


人気記事

1

今回は、BeatsbyVinityTVが解説する「Skrillexのようにリミッターとクリッパーを使って音圧を上げる方法」をまとめました。Skrillexと言えば、激しい音楽と爆発的な音圧が特徴的です。今回は、彼のように音圧を爆上げするにはどうしたらいいのか、その方法を解説していきます。

2

今回は「SM7B vs SM58」をまとめました。ボーカルやギターのレコーディングによく使われるのが、SHURE社のSM7BとSM58です。どちらも超定番のマイクですが、一体何が違うのでしょうか?この記事ではそれぞれの特徴をじっくりご紹介しながら、どちらのマイクを選ぶべきか、その基準を解説します。

スプリングリバーブとは 3

今回は、Sweetwaterが解説するよく使われる5種類のリバーブ(Hall・Chamber・Room・Plate・Spring)の違いについてまとめました。これら5種類のリバーブの特徴や違いをそれぞれ解説しますので、読み終わる頃には、自分が今欲しいリバーブをすぐに判断できるようになります!

4

この記事では、ヒット曲を作曲するための方法を解説した記事をまとめています。作曲・編曲・ミキシング・マスタリングなど、音楽制作の工程ごとに分けてご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

5

今回は、Cableguysが解説する「ShaperBox 3の紹介」をまとめました。Cableguys社のプラグイン「ShaperBox」は、作曲からミックスまで幅広く使える超万能プラグインです。この記事では、ShaperBoxの主な機能5つと、特に魅力的な機能の使い方をご紹介します。

6

今回は、数々のモニタースピーカーを販売しているAdam Audio社が解説する「自宅スタジオ~3レベル~」をまとめました。自宅の小さな寝室でDTMをしている方からプロを目指している方まで、レベル別におすすめのDTMセットをご紹介します。

Oeksound 「Soothe2」の驚くべき使い方【DTM MIX】 7

今回は、Riffs,Beards&Gearが解説する「Oeksound Soothe2の秘密」をまとめました。発売以降、「このプラグインのおかげでミックスの効率がものすごく上がった」「もうこのプラグインなしではミックスできない」というプロが世界中で続出したこのプラグインを驚くべき方法で使いこなす方法をご紹介します!

8

今回は「CPUパフォーマンスとリアルタイムパフォーマンスの違い」をまとめました。DTMをしていてよくあるのが「DAWの動作が遅くなる」というトラブルです。ここで重要なのが、この2つのパフォーマンスの違いを理解しておくことです。そこでこの記事ではこれら2つを解説し、サクサクとDAWを動かすためのコツをご紹介します。

iLokが故障・盗難・紛失したときにやるべきことと、事前にやっておくべきことまとめ 9

今回は、DTMerにはおなじみの「iLok」が故障・盗難・紛失したときにやるべきことと、故障・盗難・紛失前にやっておくと安心する5つの項目をまとめました。万が一のときにどうするべきかを知っておくだけでも安心材料になりますので、ぜひご覧ください。

ドリアンモードを使ったゲーム音楽 10

今回は、8-bit Music Theoryが解説する「ドリアンモードの使い方」をまとめました。この記事では前編として「ドリアンモードの基礎」と「ドリアンモードを使ったシリアス&ダークなゲーム音楽の例」をご紹介します。

-ミキシングのコツ