用語解説

ゲートリバーブとは?作り方も解説!【スネアドラムにも使える】

今回は、Underdog Electronic Music Schoolが解説する「ゲートリバーブのテクニックを4つの難易度で解説する」をまとめました。

ポップスやダンスミュージックなどでよく使われるリバーブですが、いったいどんな音がするのでしょうか?

この記事では「ゲートリバーブとは何か?」とその作り方を解説します。

The "Gated Reverb" technique in 4 levels of complexity

ゲートリバーブ(Gate Reverb)とは?

ゲートリバーブとは、リバーブ音(残響音)のうち、基準の音量を下回る音だけを消して鳴らすリバーブのことです。

例えば、こちらのクラップ(拍手)の音に対してゲートリバーブを使うと、このようなサウンドになります↓

0:18~0:25

The "Gated Reverb" technique in 4 levels of complexity

お聞きいただいた通り、クラップがなった瞬間は「パーン」と残響音の音が響き渡りましたが、突然リバーブ音が途切れたようなサウンドです。

「ブォーン!」と残響音が一瞬鳴った後、突然「プチンッ」と音が切れるようなイメージです。

ロングリバーブやショートリバーブとの違いは?

ロングリバーブやショートリバーブは、文字通り「長さ」にフォーカスしたリバーブで、残響音は自然に減衰していきます。

ロングリバーブは残響音の長さ(Tail)が長く、ショートリバーブは残響音の長さが短いです。

一方、ゲートリバーブは残響音を途中でぶった切るようなサウンドなので、ロングリバーブであれショートリバーブであれ、一瞬だけ残響音を「ボーン!」と鳴らした後、突然リバーブ音が消えたようなサウンドになります。

加えて、ゲートリバーブは残響音の音量をMAXに近いレベルまで上げることが多いので、残響音が非常によく聞こえます。

対して、ロングリバーブやショートリバーブはあくまでも「ホールのような大きい空間で鳴っている感じが欲しい」「お風呂場ぐらいの小さい部屋で鳴っている感じが欲しい」というときに使われることが多いです。

そのため、「リバーブ音の音量」よりは「音が鳴っている空間の広さ」「自然な残響音」が欲しいときに使われます。

言い換えれば、ロングリバーブやショートリバーブは現実世界で聞く残響音にかなり近い自然な音であるのに対し、ゲートリバーブは現実世界ではありえないような残響音の消え方をします。

そのため、ゲートリバーブは「インパクトや迫力」が欲しいときにも使えます。

ゲートリバーブを使った曲の例

ゲートリバーブは、特に80年代の楽曲でよく見られるリバーブです。

特にスネアに使われることが多いので、ぜひスネアに注目して聞いてみてください↓

Frida - I Know There's Something Going On

Frida - I Know There's Something Going On

David Bowie - Let's Dance

David Bowie - Let's Dance (Official Video)

Phil Collins - In the Air Tonight(3:41~)

Phil Collins - In the Air Tonight

Peter Gabriel - Intruder

Peter Gabriel - Intruder

ゲートリバーブの作り方4種類

それではここからは、ゲートリバーブの作り方を4種類ご紹介します。

1.ゲートプラグインを使う方法
2.ゲートプラグインにサイドチェインを使う方法
3.パラレル処理を使う方法
4.リバーブの質感を自由自在に変更する方法

簡単な方法から順番にご紹介していきますので、初心者の方は1から順番にお試しください。

ゲートリバーブの作り方1.ゲートプラグインを使う方法

ゲートリバーブを作る1つ目の方法は、最もベーシックな方法で「ゲートプラグインを使う方法」です。

これはシンプルに、リバーブプラグインの後にゲートプラグインを追加するだけです。

手順
1.ゲートリバーブをかけたい音に対して、リバーブプラグインを追加する
2.リバーブプラグインのDecayを上げてリバーブ音を増やす
3.リバーブプラグインの後に、ゲートプラグインを追加する
4.ゲートプラグインのThresholdを調整する

ゲートプラグインを使う実例

今回は909系のスネアのサンプルを使います。

まずは、スネアの音をチェックしてみましょう。

1:52~1:58

The "Gated Reverb" technique in 4 levels of complexity

非常にシンプルなスネアの音であることがわかります。

次は、このスネアに対してリバーブをかけます。

使うリバーブプラグインは何でもOKですので、リバーブの設定で「Decay」のパラメーターを最大限まで上げてみましょう。

2:08~2:16

The "Gated Reverb" technique in 4 levels of complexity

こうするとディケイタイム(Decay Time)がMAXになり、「バシャーン!」と響き渡る音になります。

次は、このスネアに対してゲート(Gate)をかけます。

こちらも使うプラグインは何でもOKですので、お手持ちのゲートプラグインをスネアに対して追加します。

ゲートプラグインではThreshold(スレッショルド)を調整し、「どれぐらいの音量を下回った音をカットするか」の基準を決めます。

このThresholdの値によって、リバーブ音が何秒間持続するのか(リバーブ音がいつ途切れるのか)が変わりますので、お好みの値に調整しましょう。

2:40~2:51

The "Gated Reverb" technique in 4 levels of complexity

ゲートリバーブの作り方2.ゲートプラグインにサイドチェインを使う方法

ゲートリバーブを作る2つ目の方法は、「ゲートプラグインにサイドチェインを使う方法」です。

サイドチェイン(Side Chain)とは、「トリガーとなる音が鳴っている間は音量を抑え、鳴っていない時は音量をそのままにする」という機能です。

例えば、「キックが鳴っているときはベースの音量を下げる」という目的で使うことがあります。

これをゲートリバーブに応用するのが、今回ご紹介する方法です。

サイドチェインは「トリガーとなる音が鳴っている間は音量を抑え、鳴っていない時は音量をそのままにする」ので、言い換えれば「トリガーとなっている音が鳴っている間はリバーブ音を止める」という使い方もできます。

つまり、もしゲートプラグインにサイドチェインを使えば「サイドチェイン先(トリガーとなる音)が鳴っているときはリバーブ音を鳴らし、鳴っていないときはゲートを発動する」という設定ができます。

4:20~4:39

The "Gated Reverb" technique in 4 levels of complexity
手順
1.ゲートリバーブをかけたい音に対して、リバーブプラグインを追加する
2.リバーブプラグインのDecayを上げてリバーブ音を増やす
3.リバーブプラグインの後に、ゲートプラグインを追加する
4.ゲートプラグインにサイドチェインを設定する
5.ゲートプラグインのThresholdを調整する

サイドチェインを使ってゲートリバーブを作るときのポイントは、「サイドチェインのトリガーを何の音にするか」です。

つまり「どの音が鳴らなくなったらリバーブ音を抑えるか」の設定によってゲートリバーブの鳴り方が変わるため、このチョイスは重要です。

例えば、もしスネアに対してゲートリバーブをかけている場合で、そのスネアの元の音をサイドチェインのトリガーとしたい場合は、ゲートプラグインの設定を「Pre FX」にする必要があります。

これは、リバーブをかける前の音(元の音)が鳴っている間はリバーブ音を増やしたいからです。

もしこのように設定しないと、リバーブをかけた後のスネアの音(リバーブを含んだ音)をトリガーとしてしまうため、ゲートリバーブが作れなくなります。

ゲートプラグインにサイドチェインを使うメリット

はじめにご紹介した「ゲートリバーブの作り方1」に比べて、このサイドチェインを使う方法は少し手順が増えてしまいます。

しかし、ゲートをかけるタイミングや長さをより細かく設定できるため、サイドチェインを使った方が自由自在にゲートリバーブを作ることができます。

特に、「この音が鳴っている間はリバーブを鳴らす」「この音が鳴っていない時はリバーブをカットする」という設定を、ただのパラメーターの数字ではなく実際のオーディオデータをもとにして正確に設定できるため、ゲートが変に開いたり閉じたりする心配も少なくなります。

ゲートリバーブの作り方3.パラレル処理を使う方法

ゲートリバーブを作る3つ目の方法は、「パラレル処理を使う方法」です。

DTMにおいて、「パラレル」は「元の音とエフェクトをかけた後の音の割合を調整すること」を指します。

元の音を変えずにエフェクト音を好きな量だけ加えられるのが、パラレル処理のメリットです。

これをゲートリバーブに応用する場合は、「ゲートリバーブの作り方2」とほとんど同じ手順を行います。

1つだけ異なるのは、ゲートプラグインをかけたい音に対して直接リバーブをかけるのではなく、パラレル処理(Sendトラック)を使ってリバーブをかける点です。

手順
1.リバーブ用のSendトラックを作る
2.リバーブプラグインのDecayを上げてリバーブ音を増やす
3.リバーブプラグインの後に、ゲートプラグインを追加する(※)
4.ゲートリバーブをかけたい音に対して、Sendでリバーブを増やす
※ゲートプラグインの設定は、「ゲートリバーブの作り方1」「ゲートリバーブの作り方2」のうちいずれの設定でも構いません

パラレル処理を使ってゲートリバーブを使うメリット

パラレル処理を使ってゲートリバーブを使うメリットは、元の音に影響を与えずにリバーブをかけられる点と、オートメーションでリバーブ音を変更しやすくなる点です。

特にオートメーションが使える点においては、リバーブの量を場所によって自由自在に変更できるため、例えば「1回目に鳴らすスネアにはリバーブをかけないが、2回目に鳴らすスネアにはゲートリバーブをかける」などの処理ができるようになります。

オートメーションを使ってゲートリバーブをかける例(7:29~7:48)

The "Gated Reverb" technique in 4 levels of complexity

ゲートリバーブの作り方4.リバーブの質感を自由自在に変更する方法

ゲートリバーブを作る4つ目の方法は、ただ単にゲートリバーブを足すのではなく、「ゲートリバーブの質感を自分好みに自由自在に変更する方法」です。

これまでご紹介したゲートリバーブを作る方法を実践した後、例えばリバーブの後にフィルターやディストーションのエフェクトなどをかけると、さらにクレイジーなゲートリバーブが出来上がります。

例えばリバーブプラグインとゲートプラグインの間にFrequency ShifterとOverdriveをかけてみると、リバーブ音が爆発したような音になり、非常にアグレッシブなゲートリバーブが出来上がります。

8:33~8:51

The "Gated Reverb" technique in 4 levels of complexity

スネアとピアノにゲートリバーブを使う例

それでは最後に、今回ご紹介したテクニックを使いながらスネア・ピアノにゲートリバーブを使った例をご紹介します。

9:42~10:40

The "Gated Reverb" technique in 4 levels of complexity

ゲートリバーブとは・作り方まとめ

以上でゲートリバーブの解説は終了です。

ゲートリバーブとは?
リバーブ音を、一定の音量以下になったらバッサリ切ること
ゲートリバーブの作り方
・ゲートプラグインを使う
・サイドチェインを使う
・パラレル処理(Sendトラック)を使う
・リバーブにエフェクトを加えて味付けをする

当サイトでは他にもリバーブに関するテクニックをまとめていますので、ぜひこちらもご覧ください↓


人気記事

1

今回はAdam Audio社とIn The Mixが解説する「スピーカーは縦置き or 横置きのどちらがいいのか?」をまとめました。 多くのスピーカーは正方形ではなく長方形であることが多いですが、縦置 ...

2

世界的にヒットしている曲の構成ってどうなってるの? 「ヒット曲の公式」みたいなのがあるといいんだけど… 今回はこのような疑問にお答えします。 https://www.youtube.com/watch ...

3

今回は、世界にある「超が付くほど珍しい楽器」を10個ご紹介します。 この中には、ギネス記録を樹立したとんでもない楽器もあります。 みなさんが知っている楽器はいくつあるか、ぜひ数えながらそのサウンドをお ...

4

日本っぽい和風な楽曲を作りたいんだけど、どんなテクニックを使えばいい?「日本の音階」にはどんな種類がある? 今回はこのような疑問にお答えする内容です。 英語版wikipediaの「日本の音階」で紹介さ ...

5

Auto-Tuneってどうやって使えばいいの?プロみたいに細かくキレイにボーカルを修正するにはどうしたらいい? 今回はこのような疑問にお答えする内容です。 https://youtu.be/wMoGX ...

6

音楽におけるアップビート、ダウンビート、オンビート、オフビート、バックビート… 似たような言葉だけど、何が違うの?覚えられない… 今回はこのようなお悩みにお答えする内容です。 「アップビート」「オフビ ...

7

CメジャーキーとAマイナーキーって、どう違うの? 聞き分け方はある? 今回はこのような疑問にお答えする内容です。 https://www.youtube.com/watch?v=lPDVo-7Ua28 ...

8

当サイトのnoteアカウントにて「楽曲のサビ・Aメロ・Bメロ・Cメロ・ポストコーラス・イントロ&アウトロの作り方」をそれぞれアップしました。 「曲を作るときに何から始めたらいいかわからない」「 ...

9

https://youtu.be/bjqArFjaZLI 今回は、ジャズのスペシャリスト・Kevin Castroが解説する「ジャズの基本コード進行3つ」をまとめました。 ここでご紹介する3つのコード ...

10

今回は、「絶対に買って損しない、おすすめDTM音源・プラグイン」をまとめました。 当サイトでは、これまで数多くの海外プロのDTMテクニックをまとめてきました。 その中でも、特に多くの音楽プロデューサー ...

11

今回は、Sage Audioが教える「カリッとしたボーカルにするためのMIXテクニック」をまとめました。 全部で9個あり、組み合わせて使うことで非常に魅力的な音にすることもできますので、ぜひお試しくだ ...

-用語解説