マスタリングのコツ

【DTM・MIX】プロのように音圧を爆上げする方法

How Skrillex Uses Limiters and Clippers for Maximum Loudness

今回は、BeatsbyVinityTVが解説する「Skrillexのようにリミッターとクリッパーを使って音圧を上げる方法」をまとめました。

Skrillexと言えば、激しい音楽と爆発的な音圧が特徴的です。

SKRILLEX - Bangarang feat. Sirah [Official Music Video]

今回は、彼のように音圧を爆上げするにはどうしたらいいのか、その方法を解説していきます。

「コンプレッサー」「リミッター」「クリッパー」の違いとは?

音圧を上げるには「コンプレッサー」「リミッター」「クリッパー」などが使われますが、そもそもこれらの違いは何でしょうか?

一般的に、リミッターもクリッパーも「コンプレッサー」の1種です。

https://youtu.be/4RMIgKGF2Zg?si=Rc-q0vLUQzhIdFni

コンプレッサー

出過ぎた音を抑える(潰す)

リミッター

出過ぎた音を抑える(コンプレッサーのレシオがとても強い版)

クリッパー

出過ぎた音をバッサリ切る(切ったところの音が歪む)

ここからは、この3つを上手に使いこなして音圧を上げるために、各プラグインやパラメーターについて詳しく解説していきます。

コンプレッサーやリミッターの「レシオ」とは?

https://youtu.be/4RMIgKGF2Zg?si=Rc-q0vLUQzhIdFni

コンプレッサーにはレシオ(Ratio)というパラメーターがあります。

レシオは、スレッショルドを超えた音(基準を超えた音)を何分の1にするかを決めるパラメーターです。

レシオが「1:1」なら音は何も変わらず、「2:1」なら出過ぎた音の音量を半分に、「3:1」なら音量を3分の1にします。

つまり、レシオが強ければ強いほど(数字が大きいほど)、音が強く抑えられます。

「8:1」以上だと音量がスレッショルドで決めた音量とほぼ同じ程度になるため、「音を抑える」というよりは「これ以上の音を出させない」というニュアンスの方が近いでしょう。
※上記画像で言うとオレンジと赤のライン。図面の上に線が伸びるほど音量が大きくなります。

コンプレッサーやリミッターの「スレッショルド」とは?

https://youtu.be/4RMIgKGF2Zg?si=Rc-q0vLUQzhIdFni

スレッショルドとは、リミッターがかかり始める音量を決めるパラメーターです。

リミット=制限を決めることになるなので、「これ以上音量を出させないでください」ということになります。

コンプレッサーにもスレッショルドがありますが、こちらはどちらかと言うと「これ以上の音量が出たらコンプレッサーをかけ始めてください」というニュアンスになります。
※実際にやっていることは同じなのですが、リミッターの方が「これ以上の音量を出させない」というニュアンスが強いです

リミッターの「シーリング」とは?

https://youtu.be/4RMIgKGF2Zg?si=Rc-q0vLUQzhIdFni

リミッターにはシーリング(Ceiling)というパラメーターがついていることがあります。

シーリングは、リミッターをかけた音の最大音量を示すパラメーターです。
※Ceilingは「天井」という意味があります。

基本的には0.0dBに設定されています。

https://youtu.be/4RMIgKGF2Zg?si=Rc-q0vLUQzhIdFni

リミッタープラグインとして最も有名なFabfilter社「Pro-L」は、画面左に「GAIN」のパラメーターがあり、この値を増やすとどんどんリミッターがかかっていきます。

かなり小さい文字ですが、右下には「Out 0.0 dBTP」と書かれています。

これはシーリングの値で、「GAINを上げても、リミッターをかけた後の音は0.0dBTP以上になりません」ということを示しています。

単純に音量を上げただけではないので、GAIN=音量を上げたことによるクリッピング(音割れ)の心配がありません。

クリッパーとは?コンプレッサーやリミッターとの違いは?

クリッパーとは、スレッショルドを超えた音をバッサリ切るプラグインです。

クリッパーやリミッターは、スレッショルドを超えた分の音量を「抑える」「潰す」というイメージですが、クリッパーは「切り」ます。

https://youtu.be/4RMIgKGF2Zg?si=Rc-q0vLUQzhIdFni


例えば上記画像では、スレッショルドを超えた分の音が赤くなっています。

https://youtu.be/4RMIgKGF2Zg?si=Rc-q0vLUQzhIdFni

この分の音量をバッサリ切って、スレッショルド以下の音量に整えるのがクリッパーです。

ナイフでそのまま横に切ったようなイメージです。

クリッパーはこのように人工的にバッサリ切っただけなので、切れ目はなめらかではありません。

そのため、クリッパーを使うと音が少し歪むことがあります。

クリッパーには「ソフト」と「ハード」がある

https://youtu.be/4RMIgKGF2Zg?si=Rc-q0vLUQzhIdFni


クリッパーには「ソフトクリッピング」と「ハードクリッピング」の2種類があります。

https://youtu.be/4RMIgKGF2Zg?si=Rc-q0vLUQzhIdFni

ソフトクリッピング:切れ目が曲線的(より元の音の波形の形に近い)

ハードクリッピング:切れ目が直線的

ハードクリッピングの方が音に歪みが出ますが、その分バキっとした力強さが出ることもあります。

リミッターで上手に音圧を上げるには「タイミング」が重要

リミッターを使って音圧を上げたいときに重要なのが、リミッターを使うタイミングです。

基本的に、ミックスまでの段階でリミッターやクリッパーを使うときは、Bus(グループトラック)ではなく、個別トラックに対して使うことが多いです。

これは、マスタリングの段階で全トラック・全Busを同じレベルでリミッティング・クリッピングできるように整えるためです。

出過ぎたトランジェント(音の立ち上がり)を個別トラック単位で整えておくことで、マスタリング時でリミッティングをかけやすくします。

これはSkrillexも使っている手法で、特にEDMでよく使われます。
※すべてのジャンルに適しているやり方ではないので、ケースバイケースです

逆に言えば、もしマスタリングではなくミックスまでの段階でリミッターを使っており、すでに音が潰れすぎている場合は要注意です。

リミッター・クリッパーで上手に音圧を上げるコツ3つ

ここからは、リミッター・クリッパーで上手に音圧を上げるコツを3つご紹介します。

上手に音圧を上げるコツ1.音量を平らにならす

https://youtu.be/4RMIgKGF2Zg?si=Rc-q0vLUQzhIdFni

音圧を上手に上げるには、トランジェント(音の立ち上がり部分)を上手に残しながら、音量をできるだけ平らにすることが大切です。

リミッターを使うと出過ぎた音を抑えることができますが、トランジェントもすべて潰してしまうと、音にパンチがなくなってしまいます。

一方で、音をある程度潰して音量を平らにならさないと、音圧を感じにくくなります。

そのため、トランジェントを残しながら上手にリミッティングをすることが大切です。

https://youtu.be/4RMIgKGF2Zg?si=Rc-q0vLUQzhIdFni


例えばリミッターで最も有名なプラグインの1つであるFabfilter社「Pro-L」では、波形が画面に表示されますので、どの音がどれぐらいリミッティングされたのかを視覚的に把握しやすくなっています。

https://youtu.be/4RMIgKGF2Zg?si=Rc-q0vLUQzhIdFni

一方、中にはプラグイン内で波形が表示されないタイプのリミッターもあります。

アナログ機材をエミュレートした(再現した)プラグインなどによくあるタイプで、有名なプラグインにはBrainworkx社「Shadow Hills Mastering Compressor」があります。

このようなアナログ系プラグインの場合は、音量が-20dB~-10dB程度に収まるように設定されていることが多いです。


リミッタープラグインにこのような機能がなくても、「オシロスコープ」と呼ばれるタイプのプラグインを使えば、波形を視覚的に確認することができます。

https://youtu.be/4RMIgKGF2Zg?si=Rc-q0vLUQzhIdFni

上手に音圧を上げるコツ2.リリースを上手に調整する

https://youtu.be/4RMIgKGF2Zg?si=Rc-q0vLUQzhIdFni

リミッターにおけるリリース(Release)は、リミッティングした後にスレッショルドを下回ったとき、どれぐらい速く元の状態に戻すか(リミッティングをやめるか)を決めるパラメーターです。

リミッティングの強さ・長さに関わるパラメーターなので、リリースの長さによって楽曲のグルーヴ感が大きく左右されます。

例えばリリースが速いと、リミッティングがかかった音とかかっていない音の間の時間が短いので、ポンポン跳ねるような音になりやすいです。

逆にリリースが遅いと、リミッティングされている時間がとても長くなるので、次の音までリミッティングしてしまうことがあります。

次の音が発音されたとき…つまり次の音のトランジェントも潰してしまいかねないので、リリースが遅すぎるとパンチがなくなってしまう可能性があります。

このような効果が「いい」と思う楽曲もあれば「不自然」と感じる楽曲もあるので、リリースはその曲によってよくチェックした方がよいでしょう。

試しに、リリースを最速にした場合と最遅にした場合を比べて聴いてみましょう。

リリース最速・最遅の比較 5:49~6:09

How Skrillex Uses Limiters and Clippers for Maximum Loudness

リリースを調整するときは、特にトラックのリズムやリズム系の楽器に注目して聴いてみてください。

楽曲にパンチがなかったりもったりと鈍い感じがするときは、リリースを速めにしてみるといいかもしれません。

上手に音圧を上げるコツ3.工夫をして音量を上げる

https://youtu.be/4RMIgKGF2Zg?si=Rc-q0vLUQzhIdFni

「音圧を上げたい」ということは、「音量を大きく聴かせたい」ということになるでしょう。

音量を大きく聴かせるには、これまでご紹介した「コンプレッサー・リミッター・クリッパー」の使い分けや、各トラックとBusの使い分け、 リリースの調整などが必要になります。

逆に言えば、これらがしっかりできていると、メーターの数字的には同じ音量でもより音圧を大きく聴かせることができたり、強くリミッティングしても音質を損なわずに済みやすくなります。

「ただ音量を上げればいい」「ただアタックを強くすればいい」という考えではなく、工夫して音量を大きくするとよいでしょう。

おすすめのリミッター・クリッパープラグイン

最後に、おすすめのリミッター・クリッパープラグインをご紹介します。

Fabfilter社「Pro-L2」

リミッタープラグインの中でも最も有名な製品の1つです。

買って絶対に損はないと言えるほど、世界中のエンジニアに使われています。

Brainworkx社「Shadow Hills Mastering Compressor」

今回の解説で登場したプラグインです。

有名なマスタリングコンプレッサーをプラグインで再現した製品で、マスタリングでよく使われます。

Softube社「Clipper」

シンプルで使いやすいクリッパープラグインです。

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Kazrog社「KClip Zero」

無料プラグインですが、とても使いやすくおすすめです。

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