今回は、EDM TipsのWill Darlingが解説する「プロが使っている7つのトランジションの秘密」をまとめました。
AメロからBメロへ行くとき、Bメロからサビへ行くときなど、楽曲中で場面転換をするときはスムーズに次へつなげたいでしょう。
最も有名なのがドラムのフィルインですが、それ以外にも使えるトランジションはたくさんあります!
今回ご紹介するテクニックを使えばさまざまなジャンル・場面で応用できますので、ぜひトライしてみてください。
場面転換(トランジション)をする方法1つ目
場面転換(トランジション)をする方法1つ目は「パーカッションリバース」です。
スネアドラムなどの打楽器の音をリバース(逆再生)させます。
パーカッションリバースの作り方
- 好きな打楽器のサンプルを選ぶ
- リバーブを多めにかける
- リバース(逆再生)させる
- 最後の部分(元の音のトランジェント部分)をカットする(必要であれば)
リバースさせると、音の最後に不自然なアタック音が入ることがあります。
これは元の音のトランジェント部分なので、不自然であれば削除してもよいでしょう。
また、これを応用してリバースさせた音とリバースさせていない音をつなげる方法もあります。

上記画像のようにリバースさせた音の後に元の音をつなげることで、よりインパクトのあるトランジションを作ることができます。
(リバースした音と同じリバーブを、元の音にかけてもOKです)
さらに、リバース音に対してステレオワイドニングの効果を加えると、より広がりが出ます。
iZotope社「Ozone Imager」は無料ダウンロードできるのでおすすめです。
場面転換(トランジション)をする方法2つ目
場面転換(トランジション)をする方法2つ目は「ライザー(Risers)」です。
音程がだんだん上がっていくようなサウンドを加えると、次の展開に向かって気持ちも上がっていくため、トランジションにぴったりです。
ライザーはどちらかと言うと打ち込みよりもサンプルを使うことが多いですが、サンプルを探す時は「Riser」「Reverse」「Sweep Up」などのワードで検索するとヒットしやすいです。
ライザーは16~8小節など長い時間をかけて上がっていくタイプもあれば、半拍〜1拍の短い間で完結するタイプもあります。
短いライザーを作りたい場合は、長いライザーのサンプルをカット+フェードインさせてもよいでしょう。

場面転換(トランジション)をする方法3つ目
場面転換(トランジション)をする方法3つ目は「リバースリバーブ(Reverse Reverb)」です。
リバースリバーブは、次の展開で新しい音が追加される前にフライングでその音を登場させてトランジションを作る方法です。
例えばサビからボーカルで新しいメロディーが入るときは、Bメロの最後にサビのボーカルの一部を追加し、リバースさせ、リバーブを足します。
リバースリバーブの作り方
- 次の展開で使われる要素の一部を切り取り、別トラックにコピペする
- リバースさせる
- リバーブをかける
これに加えて、以下を追加するとさらにかっこいいトランジションを作ることもできます。
応用編
- ディレイなど別のエフェクトを組み合わせる
- 全てのエフェクトを加えた状態で、オーディオトラックにバウンスする
- バウンスしたオーディオトラックをリバースさせる
例えばディレイは音がだんだん小さくなっていくエフェクトなので、ディレイ音をリバースさせるとだんだん音が大きくなって近づいてくるような印象を与えることができます。
またAuto Panのエフェクトをオートメーションでだんだん増やしていくと、さらにおもしろいサウンドになります。
ボーカルでリバースリバーブを作るときは、子音部分に違和感を覚えることがあるので、子音部分だけカット・フェードインさせて母音だけ残すこともできます。
(例えば今回の楽曲では「Don’t」という言葉のうち「o」の母音だけ残しています)
場面転換(トランジション)をする方法4つ目
場面転換(トランジション)をする方法4つ目は「スペーシャル・ウォッシュアウト(Spatial Wash-Out)」です。
特定の楽器に含まれるトランジェントを減らして、次の展開にインパクトを与える方法です。
今回はドラムで実践する例をご紹介しますが、もちろんどんな楽器にも使えるテクニックです。
スペーシャル・ウォッシュアウトの作り方
- ドラムを打ち込む
- ドラムトラックに直接リバーブを追加して、Wet(Mix)を0%にする
- オートメーションでだんだんWetを増やしていく
Wetをだんだん増やしていくとリバーブ音がどんどん増えていくので、ドラム特有のトランジェントが薄れていき、どんどん音が広がっていく印象になります。
そして次の展開に入った瞬間にドラムが元に戻るので、その瞬間のドラムが持つエネルギーが爆発し、よりインパクトのあるサウンドに聞かせることができます。
Sendでリバーブを追加すると、ドラムの元の音がそのまま鳴るため、トランジェントを取り除くことができません。
そのため、Sendではなく直接インサートでリバーブプラグインを追加するのがポイントです。
場面転換(トランジション)をする方法5つ目
場面転換(トランジション)をする方法5つ目は「ピッチベンド(Pitch Bend)」です。
ピッチベンドは音程を自由に変化させるテクニックなので、2つ目でご紹介したライザーと同じテクニックと言えます。
しかし、ここでご紹介するのはドラムにも使える方法です。
例えば短めのスネアのサンプルを使ってピッチをどんどん上げていくと、ビルドアップなどサビやドロップに向けてテンションを高めたい時に使えるサウンドになります。
ドラムをピッチベンドさせる方法
- 好きなドラムのサンプルを選ぶ
- サンプルをサンプラーに取り込み、パターンを打ち込む
- サンプラーのピッチベンド機能にオートメーションを使って、セント単位で音程を変える
サンプラーにサンプルを取り込むと、ピアノの鍵盤と同様に半音単位(100セント)で音程を変えることができます。
ピッチを変えるときはこの方法でもよいのですが、半音単位だと音程の変化が大きすぎると感じることがあります。
そのため、サンプラーにピッチベンドの機能がある場合はサンプラーのピッチベンドに対してオートメーションを使い、1セント単位で音程をオートメーションしていくことをおすすめします。

例えばAbleton Liveのサンプラーでは「Pitch Bend」の項目があり、ここの数値をオートメーションで変えることでとてもなめらかに音程を変化させることができます。
オートメーションをかけるときは、ピッチだけでなく音量(ベロシティ)も一緒に変化させていくと、さらに盛り上がりを与えることができます。
ベースをピッチベンドさせる例
もちろん、ベースなど音程のある楽器に対してピッチベンドを使うこともできます。
シンセサイザーを使う場合は、ピッチベンドの範囲を設定する必要がありますのでご注意ください。
例えばSerumでは、画面左下にある数値を変更することにより、ピッチベンドで下げられる・上げられる最大範囲を決めることができます。

場面転換(トランジション)をする方法6つ目
場面転換(トランジション)をする方法6つ目は「フィルターオートメーション」です。
シンプルに特定の周波数帯域の音をだんだん減らしたり上げたりするテクニックで、どの楽器にも使えます。
フィルターオートメーションのやり方
- フィルターをかけたいトラックに対してEQプラグインを追加する
- EQでハイカットorローカットのバンドを追加する
- EQに対してオートメーションをかける
場面転換(トランジション)をする方法7つ目
場面転換(トランジション)をする方法7つ目は「フックヒント(Hook Hint)」です。
特にサビやドロップの前に使えるテクニックで、サビやドロップで象徴的なメロディーをトランジションに使う方法です。
(メインボーカルなど、一番目立つメロディーラインでなくてもOKです)
リバースリバーブの時も同様の方法を使いましたが、こちらの方がよりメロディックなトランジションです。
フックヒントのやり方
- 次の展開で使われるメロディーラインをコピペする
- リバーブを多めにかける
- EQなどを使ってフィルターをかける
- フィルターをオートメーションで動かす
(例えばハイカットフィルター・ローパスフィルターをかけ、徐々に音がはっきり聞こえてくるようにすると、サビで盛り上がりやすくなります)
この他、Auto Panなど別のエフェクトも一緒にオートメーションをかけていくとおもしろいサウンドになります。
場面転換(トランジション)を作るのにおすすめのDTMプラグイン
最後に、場面転換(トランジション)を作るのにおすすめのDTMプラグインをご紹介します。
いずれも場面転換以外にも使える万能プラグインですので、持っていて損はありません。
まだお持ちでないプラグインがあれば、ぜひチェックしてみてください!
Output社「REV」
リバース系のサウンドに特化したプラグインで、まさにトランジション制作にうってつけです。
プリセットが非常に豊富なので、手持ちのリバース系サンプルが少ない方や、なかなかアイデアが出てこない時にもおすすめできます。
Keepforest社「AizerX」
ハリウッド映画のトレイラーのようなサウンドが使えるプラグインで、トランジション作成にピッタリのプリセットが揃っています。
非常に迫力のあるサウンドからシリアスなサウンドまで対応できるため、さまざまなタイプのトランジションを作ることができます。
映像音楽はもちろん、ポップスやダンスミュージックなどにも使えます。
Cableguys社「ShaperBox」
ShaperBoxは、10種類のエフェクトを好きなタイミング&好きな強さで使用することができるプラグインです。
今回の解説で登場したリバースやフィルターのエフェクトはもちろん、ディストーションや速度変化などのエフェクトもこれ1つあれば全て使えます。
エフェクトは組み合わせて使うこともできるため、エフェクトの可能性を無限大に広げることができます。
ShaperBoxの使い方解説はこちら🔻
