作曲全般

【DTM】大量のボーカルトラックを使った12の作曲テクニック 前編

Here's a weird way to make interesting chords!

今回は、カナダの有名プロデューサーAndrew Huangが投稿した動画「この曲にはボーカルが69トラックあります」の内容をまとめました。

この記事では前編として、この動画で紹介されている12のテクニックのうち1~6個目のテクニックをご紹介します。

後編はコチラ

Andrewの曲には、どうしてこんなに多くのボーカルトラックが使われているのか?

ボーカルをうまく活かした作曲方法はどんなものなのか?

この疑問にお答えするのはもちろん、今日からすぐ使えるテクニックが満載ですので、ぜひお試しください!

作曲テクニック1.複雑→解決感のあるコードを作ってみる

1つ目の作曲テクニックは「複雑→解決感のあるコードを作ってみる」です。

動画で紹介しているAndrewの楽曲では、複雑なサウンドから、すっきりと解決感のあるサウンドへと変化するボーカルが使われています。

0:51~0:56

This song has 69 vocal tracks

ちなみにハーモニーに関しては「耳で聞いて、いいと思ったものを使った」といいます。

ベース:Gb
コード:Eb Gb A

分析してみると、この部分に使われるシンセパートはEb dim/Gb。

そして、ボーカルのハーモニーはこのようになっています。

Db Eb Gb A C

Db Eb F Ab Db
= Db9

最初はEbからFにいく進行を思いつき、そこから「おもしろさもあり、解決感のあるコード進行」を試行錯誤した結果、このようなコード進行になりました。
(最後に7thである「C→Db」の進行を足したそうです。)

作曲テクニック2.コード進行中のハーモニーの動きを考えてみる

2つ目の作曲テクニックは「コード進行中のハーモニーの動きを考えてみる」です。

例えば先ほどの「1」で紹介したコード進行ですが、実は、最初のコードと次のコードにはEbとDbが共通しています。

しかし「DbがEbに上がったり、Ebがずっと鳴っていたり、EbがFに行く感じも欲しい」というアイデアがあったため、それらをそれぞれボーカルで再現。

2:09~2:19

This song has 69 vocal tracks

またこの際、複数のボーカルパートがあるので、少しずつパンニングもしているのがコツです。

こうすると広がりのあるサウンドになりますし、ミキシングの時も帯域が被らずに済みます。

作曲テクニック3.リバーブをパンニングしよう

3つ目の作曲テクニックは「リバーブをパンニングしよう」です。

例えばこのボーカルには、リバーブを徐々に加えていくオートメーションを使っています。

2:45~2:48

This song has 69 vocal tracks

さらにこのリバーブに対して、Auto Panを使っています。

画像:動画より

2:50~2:54

This song has 69 vocal tracks

こうすると、リバーブがだんだん強くなり、Auto PanのRateも少しずつ速くなっていき、奥行きのあるサウンドになります。

またリバーブのおかげで少し濁った感じになり、1つ1つの主張を和らげ、全体がつながって、まとまって聞こえるようになります。

このようなバッキングボーカルには欠かせないテクニックです。

作曲テクニック4.フレディー・マーキュリー!?

4つ目の作曲テクニックは「フレディー・マーキュリー!?」です。

これはフレディー・マーキュリーが所属しているバンド「QUEEN」の楽曲「ボヘミアン・ラプソディー」で使われているテクニック。

複数あるパートを、タイミングをズラしてパンを振るというものです。

3:33~3:37

This song has 69 vocal tracks

3:55~3:58

This song has 69 vocal tracks

どの音をどういう順番で鳴らすのか?も聞こえ方に影響するので、こちらも試行錯誤してみましょう。

作曲テクニック5.テキスト・ペインティング

5つ目の作曲テクニックは「テキスト・ペインティング」です。

こちらは、先ほどの「フレディー・マーキュリー」のサウンドに少しエディットして使っているテクニックです。

4:53~4:59

This song has 69 vocal tracks

レイヤーした2つのボーカルの最後を、コードの変化に合わせてスプリットしていきます(トレモロ・スタッター)。

これは、トレモロをかけて「Rate」と「Depth」をオートメーションで変えていきます。

画像:動画より

プラス、リバーブに対してもオートメーションでトレモロをかけています↓

5:20~5:23

This song has 69 vocal tracks

そして、リバーブに対してディストーションを使います。

こうすると、よりダークなサウンドになります。

5:26~5:29

This song has 69 vocal tracks

テキストペインディング(ワードペインティング)とは?

音楽用語で、テキスト・ペインティングというものがあります。

これは、音楽が歌詞通りに変化していくテクニックのことです。

たとえば、「上がる」という言葉に関連した歌詞の時は、上昇系のメロディーにしたり、ピッチがだんだん上がっていくようにしたりします。

Andrewも、歌詞や描きたいイメージに合わせて、このような技法を使っているそうです。

作曲テクニック6.手動でグライド

6つ目の作曲テクニックは「手動でグライド」です。

こちらは、Auto-Tuneで使えるテクニックです。

6:35~6:38

This song has 69 vocal tracks

元は1つの音(ワンノート)で歌っていたものを、Auto-Tuneを使って手動でピッチをグライドさせています。

Auto-Tuneは手書きでピッチの線が描けるので、グライドの具合を細かく調整できます。

画像:動画より

9:00~9:08

This song has 69 vocal tracks

人間の声では再現できない「めちゃくちゃなグライド」も、線で描けます。

9:10~9:18

This song has 69 vocal tracks

Auto-Tuneのいいところは、ナチュラルにピッチを修正できる機能もあれば、逆にがっつりケロケロボイスにもできるところです。

ボーカルはボーカルでも「ちょっと人工的なバッキングボーカルっぽさを出したい」など、微妙なニュアンスもAuto-TuneがあればOKです。


前編の解説は以上で終了です。

つづき「後編」はこちら↓


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