今回は、Kermodeが解説する「Zynaptiq社PITCHMAPのサウンドデザインチュートリアル」をまとめました。
Zynaptiq社の「PITCHMAP」は「ポリフォニックピッチコレクター」と呼ばれるタイプのプラグインで、ダブステップ、フューチャーベース、Color Bassなどでよく使われます。
非常にユニークなサウンドを作ることができるので、世界中の音楽プロデューサーに愛用されています。
今回は、このPITCHMAPの使い方をかんたんに解説していきます。
Zynaptiq社の「PITCHMAP」とは?
Zynaptiq社の「PITCHMAP」は一言で言うと「ポリフォニックピッチコレクター」です。
あらゆる音を解析し、指定したキー(スケール)に最も近い倍音成分(ハーモニクス)を増やします。
そのため、鍵盤楽器などのもともと音程や倍音成分を多く含む楽器だけでなく、打楽器などの音程がないと思われる楽器にも音程をつけて(強調して)鳴らすことができます。
例えば、こちらのトラックをお聞きください。
このトラックにPITCHMAPを使うと、このようになります。
どの楽器も特定の音程が非常に強調されたサウンドになっただけでなく、全体的にキラキラとした印象になりました。
Zynaptiq社の「PITCHMAP」の使い方
それではここからは、PITCHMAPの使い方をかんたんに解説します。
キー(スケール)を指定する

まずは、どのキー(スケール)をベースに倍音成分を増やすかを決めるため、画面右下の「KEY TRANSFORM」からキーを指定します。


このとき、必ずしも実際の曲のキーに設定する必要はありません。
例えばFメジャーの曲でも、Fナチュラルマイナーに設定したり、Aドリアンに設定しても構いません。
試しにFメジャーの曲でAドリアンに設定してみると、このようになります。
音程を個別に変更する方法
PITCHMAPでは、キー(スケール)を設定した後、特定の音だけ音程を変更することができます。

例えば上記画像では、真ん中のド(C)に近いミ(E)の音が鳴ったら、ラ♭(A♭)に変更するように設定しています。
画面のうち、横方向に並んでいる鍵盤と縦方向に並んでいる鍵盤を使って調整します。
横方向に並んでいる鍵盤:いま実際に鳴っている音
画面右端に縦に並んでいる鍵盤:変更後の音程
主要な5つのパラメーター:THRESHOLD、FEEL、PURIFYGLIDE、GLIDE・ELECTRIFY
PITCHMAPでは、以下5つの主要なパラメーターを操作してエフェクトの効果を調整します。
THRESHOLD
スレッショルドを調節します。
パラメーターが上がれば上がるほど、エフェクトの効果が薄くなります。
FEEL
どれぐらい自然にピッチを調整するかを決めます。
パラメーターが下がると、音程が階段状に調整されロボットのような質感になります)。
パラメーターが上がると、より元の音に近い自然な形でピッチ変更が行われます。
PURIFY
どの程度のトランジェントやノイズに対してエフェクトを加えるかを決めます。
パラメーターが下がるとトランジェント部分にはエフェクトがかかりにくくなります。
パラメーターが上がると厳格にピッチを変更し、レゾナンスが際立つ音になります。
(パラメーターが上がるとパンチがない音になるので、ドラムなどに使うときは注意)
GLIDE
次の音に行くときのピッチの変化(カーブ)の具合を調整します。
パラメーターが下がると、階段状にすぐピッチが変わるようになります。
パラメーターが上がると、曲線状にだんだんピッチが変わるようになります。
ELECTRIFY
電子的で尖った質感を加える量を調整します。
パラメーターが下がると、電子的な質感が減ります。
パラメーターが上がると、電子的な質感が増えます。
(パラメーターを上げると、ノコギリ波(Saw Wave)や金管楽器のような鋭さが加わります)
サイドチェインMIDI機能の使い方
PITCHMAPでは、MIDIトラックをサイドチェインで扱うことができます。
例えば単音で鳴らしているオーディオトラックとコード進行を打ち込んでいるMIDIトラックを用意すると、打ち込んだコード進行通りにオーディオトラックを鳴らすことができます。
もともとは単音でも、和音を鳴らすことができます
サイドチェインMIDI機能の使い方
- オーディオトラックにPITCHMAPを追加する
- PITCHMAP画面左下の「MIDI MAP」をONにする
- サイドチェインのトリガーをコード進行を打ち込んだMIDIトラックに設定する
サイドチェインMIDI機能の応用方法
このサイドチェインMIDI機能の魅力は、もともと音程のある音に対して機能するだけでなく、そもそも音程がないような音に対してもMIDI(音程・ハーモニー)が適用されるという点です。
例えばダブステップやアシッド系のジャンルで使われるようなクレイジーなシンセベースに対してPITCHMAPを使うと、さらにクレイジーなサウンドになります。
もともとディストーションなどをかけて倍音成分が増えているサウンドだと、さらに倍音成分が際立つようになります
もともとは音程がわからないぐらい音程変化が激しい音でも、PITCHMAPを使ってその複雑さを生かすことができます。
シンセサイザーの一部をオーディオファイルにバウンスし、切り貼りした後にPITCHMAPを使うと、さらに面白いサウンドを作ることができます。
Zynaptiq社「PITCHMAP」を購入する
