マスタリングのコツ

アルバムの曲順の決め方と違うジャンルの曲を1作品にまとめるコツ

How To Master Albums (...Full of Very Different Sounding Tracks)

今回は、音楽プロデューサー・オーディオエンジニアのJustin Collettiが解説する「アルバムマスタリングの仕方~完全に違う曲でいっぱいのときは〜」をまとめました。

Justinは長年音楽業界でプロとして活躍しており、音楽プロデュース、ミキシングエンジニア、マスタリングエンジニアなど、幅広い分野で活躍しています。

そんな彼が、マスタリングエンジニアの視点から「異なるスタイルの楽曲を1枚のアルバムにまとめるときのコツ」を解説します。

作曲家がアルバムを作るときによくある質問

僕(Justin)はマスタリングエンジニアをしていますが、アルバムを作っている作曲家からはこのような質問をもらうことがあります。

1つ1つの曲のスタイルが違うのですが、1枚のアルバムとしてまとまりを出すにはどうしたらいいですか?

同じ人が作っていても、エレクトロニック系の楽曲、ヒップホップ系の楽曲、ロック系の楽曲など、1枚のアルバムにさまざまなスタイルの楽曲が収録されることがあります。

すると、1曲1曲はきちんと完成されていても「1枚のアルバム」としてはなんだかまとまりのない作品として感じられることがあります。

それでは、このように異なるジャンルの楽曲を集めて1つのアルバムにするとき、1つの作品としてまとまりを出すにはどうしたらいいのでしょうか?

「全曲違っていい」と思わせるアルバムにする

1枚のアルバムを作るとき、すべての楽曲が同じ部屋で、同じ方法で、同じ人が、同じ楽器を使って楽曲を作らなければいけないということはありません。

むしろ、ずっと同じような楽曲であるよりは、他の楽曲より明るい楽曲があったり、静かな曲があったり、盛り上がる曲があった方が、その変化を楽しめるでしょう。

そのため、大切なのは「曲と曲の間であまりにも大きな差があり、リスナーを混乱させないこと」です。

前後の曲で違いが大きすぎたり、曲調の変化が頻繁すぎると「まとまりがないアルバム」になりやすいです。

それでは、この曲と曲の間に大きな差が出ないようにするには、どうしたらいいのでしょうか?

コツは「ジャンルを2~4つのカテゴリに分けてみる」

異なるスタイルの楽曲を集めたアルバムを作るときは、まずカテゴリを2〜4つに分けてみましょう。

カテゴリの分け方はなんでも構いません。

・明るい or 暗い
・生楽器 or 電子音
・静か or 盛り上がる
・テンポが速い or テンポが遅い
・楽器の数が少ない or 楽器の数が多い
・EDM、ヒップホップ、ロック、バラード

このように一定のルールに従ってカテゴリを分けたあと、同じカテゴリが2回連続続くように曲順を調整します。

例えばマスタリングでは、はじめの1曲を聴く&マスタリングするときにとても時間がかかります。

まだその人のスタイルやそのアルバムのテイストがわからない状態なので、まっさらな状態から始めることなるからです。

ここで、次にマスタリングをする2曲目が1曲目と同じカテゴリにあると、それまで身につけてきた感覚や理解をすぐに応用しやすくなります。

逆に、明るさ・盛り上がり・ジャンル・使う楽器の種類などがあまりにも違っていると、もう一度まっさらな状態から理解し直さなくてはいけなくなってしまいます。

「さっきマスタリングした曲のちょっといじるだけでいい感じのテイストになる」という状態を作れなくなるので、作業の負担が増えてしまいます。

アルバムの曲順を決めるポイントは「流れるように変化すること」

曲順を決めるときは、できるだけ同じカテゴリの楽曲を前後に置くとよいでしょう。

例えば10曲収録しているアルバムでカテゴリが3つあるとき、「ABC ABC ABC A」にすると毎回違うスタイルの楽曲が出てくることになります。

こうすると「1つの作品」というよりは「ただの曲の寄せ集め」のような印象になってしまいます。

そのため「AAA BBB CCC A」「AABBCC AABC」などにした方が、最初から最後まで聞いたときに自然な流れに聞こえます。

A:明るく元気でアップテンポな曲
B:ベースが際立つかっこいい曲
C:落ち着いたバラード曲

もし上記のようなカテゴリ分けだったら、AとCは大きな差が出しやすいでしょう。

そのため「AAA BBB CCC A」の順番にすると、最後のCとAの落差が大きく感じ、最後のAがとても元気に聞こえるようになります。

「ACACAC」と毎回落差がありすぎると頭が混乱しますが、1ヶ所だけギャップを出す曲順を作ってみるのは効果が高いでしょう。

波の流れを考えてみよう

アルバムの曲順を決めるときは、波の形をイメージしてみるとよいでしょう。

例えばカテゴリを「明るい曲」と「暗い曲」の2つに分けるとします。

すると、明るい曲を聞くと気持ちが明るく上に上昇する感じ、暗い曲を聞くと気持ちが下に沈んでいく感じがします。

もし明るい曲と暗い曲を1曲ずつ交互に入れてしまうと、気持ちの浮き沈みが激しくて気持ちが疲れてしまいます。

そのため、サイン波のようなゆったりとした波をイメージしながら曲順を考えてみるのがおすすめです。

明るい曲を2~3曲連続させてから、なるべく落差が急にならないように暗い曲を2〜3曲続けていく、などをしていくとよいでしょう。

もちろん、リスナーを驚かせるために急激にスタイルが変わる瞬間があってもよいでしょう。

大切なのは「流れ」です。

マスタリングの順番もできるだけカテゴリごとにまとめる

例えばカテゴリを2つに分けるとしたら、2つ分のやり方・テイストを使うだけでマスタリングができます。

カテゴリA:明るく元気な曲に合うマスタリング


カテゴリB:ゆったり優しいバラード曲に合うマスタリング

マスタリングをするときには、同じカテゴリの楽曲を続けてマスタリングするとよいでしょう。

直前に行ったマスタリングの感覚をそのまま次の曲に応用できるからです。

ちなみにマスタリングエンジニアとしては、「同じような曲が10曲入ったアルバム」は「とても長い1曲をマスタリングする」という行為に近いと感じます。

そのため、さまざまなスタイルの楽曲が入ったアルバムをマスタリングをするときの方が少し大変だと感じます。

しかし、どんなジャンルの楽曲が入っていたとしても、最初から最後までアルバムを聴いたときにシームレスに聞こえるようにするのがマスタリングエンジニアの仕事です。

最近では、アルバムの曲順を真剣に考えたり僕に相談してくれるアーティストも増えてきたので、とても嬉しく思っています。

アルバムの曲順でその作品の流れが大きく変わるので、アルバムの曲順を考えることがアルバム制作の醍醐味の1つだと思うからです。


以上で解説は終了です。

当サイトでは他にもマスタリングのコツについてまとめていますので、ぜひこちらもご覧ください↓


人気記事

1

今回は、Sage Audioが解説する「ボーカルミックスの最終ステージ」をまとめました。ボーカルミックスでよくあるのが、ボーカルがインストに埋もれてしまって聞こえづらいという問題です。今回はこの問題の対処方法を3つご紹介します!

2

この記事では、世界中の作曲家・音楽プロデューサーが使っているおすすめのブラス(金管楽器)音源をご紹介します。同じ楽器でも音源によって音色が少し異なりますので、複数持っていると使い分けることができるほか、レイヤーしたときもリアルさと壮大さを増すことができます。

3

今回はCableguys社「ShaperBox3」を使うコツをまとめました。実際にBig ZがCableguys社「ShaperBox3」をどのように活用しているのか、おすすめの使い方を5つご紹介します。

4

今回は、DTMで伝説と言われているEQの1つ「Pultec EQ」の魅力と使い方ついてまとめました。なぜこのEQが世界中で使われているのか、Universal Audio社のプラグインを使いながらその魅力と使い方をご紹介します。

5

今回は、「Sonarworks SoundID Referenceの使い方」をまとめました。

DTMをするなら絶対に持っておきたいこの製品について、なぜこの製品がおすすめなのか、どの種類を買うべきなのか、具体的な使い方と測定方法をご紹介します。

6

この記事では、MIX(ミックス)でボーカルの抜けが悪い・埋もれてしまうときの対処法をまとめています。どれも実際に世界中のプロが実践している内容ですので、ぜひお試しください。

7

今回は、DTMにおすすめのコンパクトなスピーカーを5つご紹介します。いずれも小さな机で手軽に使える上に、値段もお手頃で数万円程度で購入できます。世界的なプロも愛用しているスピーカーもありますので、初心者の方も、本格的にDTMをしたい方もぜひチェックしてみてください!

8

今回は、In The Mixが解説する「モノラルでミックスをする ~秘密の武器か?時間のムダか?」をまとめました。モノラルミックスについては賛否両論ありますが、ここではMichael自身がプロのエンジニアとして活動してわかった「モノラルミックスの意味」と「モノラルミックスをするときのコツ」をご紹介します。

9

今回は、イギリスの音楽プロデューサーOceanが解説する「プロになるためにやってはいけないこと」をまとめました。音楽プロデュース歴10年、ヒップホップを中心にこれまで数多くの楽曲提供を行なっているOceanが正直に解説します。

10

今回は「絶対に買って損しない、おすすめDTM音源・プラグイン」をまとめました。特に多くの音楽プロデューサーに愛用され、世界中でベストセラーになり、買っても絶対に損しないと思えるプラグインはかなり絞られます。ここでは初心者からプロまで使えて「これさえ買っておけば問題なし」と断言できる「世界で愛用されているおすすめDTM音源・プラグイン」をご紹介します。

-マスタリングのコツ