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【DTM】横に広がるステレオベースの作り方と注意点3つ

Stereo bass is OK

今回は、Underdog Electronic Music Schoolが解説する「ステレオベースはOK」をまとめました。

ステレオベースとは「横に広がったベース」のことで、イヤホンで聞くと左右の耳から聞こえる低音域の音です。

しかし、ミックスのコツを調べると「ベースは左右に広げない方がいい」というアドバイスを見かけることがあります。

そこでこの記事では、ステレオベースの作り方と作るときの注意点をご紹介します。

はじめに:ステレオベースを聞いてみよう

はじめに、ステレオベースをお聞きいただきます。

「低音域の音がどこから聞こえるのか」に注目してお聞きください。
パソコンやスマートフォンの内蔵スピーカーでは聞き取りづらいため、なるべくステレオスピーカーやイヤホン・ヘッドホン推奨です 

0:39~0:44

Stereo bass is OK

お聞きいただいた音源には、大きく分けて3つの要素があります。

・真ん中から聞こえるキック
・真ん中から聞こえる低いタム
・横から聞こえる低い音域のパーカッション

実は3番目の「横から聞こえる低い音域のパーカッション」は、Panを振っているのではなく、ハース効果を使っています。

プロはミックスのセオリーを破る

「ベースはモノラルにするべき」「ベースは左右に広げず、真ん中からしか聞こえないようにするべき」というのは、ネットでよく見かけるアドバイスでしょう。

しかし、プロが作った市販の楽曲の中には、このセオリーを破ってかっこいいステレオベースを使っていることがあります。

プロはルールを知っているからこそ、ルールの破り方を知っているのです。

そこでここからは、よくあるベースのミックスの問題と一般的なルール(セオリー)、そしてそのルールの破り方・対処法を解説します。

よくあるステレオベースの問題1.位相の打ち消し

よくあるステレオベースの問題1つ目は「位相の打ち消し」です。

位相の打ち消しとは、2つ以上の音(波形)が同時に鳴ったときに、音が小さくなったり消滅してしまうことです。

https://www.izotope.com/en/learn/understanding-chorus-flangers-and-phasers-in-audio-production.html

これはステレオではなくモノラルの状態で聞いたときに発生しやすく、パソコンやスマートフォンの内蔵スピーカーを使ったときなどに起こりやすいです。

音を左右に広げようとすると、ステレオで聞いたときは広がって聞こえても、モノラルで聞くと位相の打ち消しが原因で音が小さく聞こえてしまうことがあります。

そのため「位相の打ち消しが起こるかもしれないからステレオベースを作るのは止めた方がいい」と言われることがあります。

「位相の打ち消し」の対処法

位相の打ち消しを避けるには、シンプルにモノラルで確認すればOKです。

プラグインを使ったり、オーディオインターフェースについているモノラル機能を使って、モノラルで音をチェックしましょう。

モノラルで聞いたときに音が小さくなっていなければ、位相の問題は心配ありません。

そのため「位相の問題が起こるかもしれないから、ステレオベースは止めておこう」とあきらめず、モノラルで聞いても大丈夫なように調整してみましょう。

関連記事

よくあるステレオベースの問題2.再生媒体の限界

よくあるステレオベースの問題2つ目は「再生媒体の限界」です。

例えばレコードで音楽を再生するとき、ベースに位相の打ち消し問題が発生していると、レコードの針が飛んで適切に再生できなくなることがあります。

そのため、楽曲のレコード盤を作るときはベースはできるだけモノラルにした方がいいとされています。

「再生媒体の限界」に対する対処法

a


そのため、楽曲のレコード盤を作るときはベースはできるだけモノラルにした方がいいとされています。

もし自分の楽曲のレコード盤を作るときや、主なターゲット層がレコードで曲を聴く人である場合は、ステレオベースは避けた方がいいかもしれません。

しかし、現代では多くの人がSpotifyやApple Musicなどのストリーミングサービスでイヤホン・ヘッドホンを使って音楽を聴くでしょう。

そのため、99%の人がストリーミングサービスの利用者だと想定される場合は、ステレオベースを使っても問題ありません。

また、今後どのような再生媒体が登場するかは誰にもわかりません。

そのため、自分の音楽の主なリスナーがどの再生媒体を使うのかについては都度考えてみるとよいでしょう。

よくあるステレオベースの問題3.集中できない

よくあるステレオベースの問題3つ目は「集中できない」です。

音が左右のあちこちから聞こえてくると、気が散って音楽に集中できなくなります。

そのため、多くの場合は「最も重要な要素は中心で鳴らすべきだ」と考えられています。

これは特に低音域の音に対して言われていることで、確かにバスドラムが右側から鳴っていると、少し違和感を覚えます。

やはり、バスドラムやベースなどの低音域は真ん中から聞こえてほしいと思うでしょう。

「集中できない」の対処法

「大切な要素は中心で鳴らすべき」というセオリーや「片側からだけ低音域が聞こえると違和感を覚えやすい」という事実を考えると、もし音を広げてステレオベースを作るのであれば、広がり方は左右対称にした方がいいでしょう。

「とても大きな音で常に鳴っている楽器が片方からしか聞こえない」というアシンメトリーなバランスは避けた方がいいかもしれません。

「途中で少しだけ右にズレたタムが聞こえてくる」という程度であれば、逆に位置が中心からズレていることがいいアクセントになるでしょう。

横に広がる「ステレオベース」の作り方

それではここからは、音が横に広がるステレオベースの作り方をご紹介します。

ステレオベースの作り方1.ベースの音を作る

まずはバスドラムを4つ打ちで鳴らし、ここにステレオベースとして使うタムを少しだけ入れます。

もともと音が低いタムなので、ベースのように聞こえます。
もちろん、タムではなくシンセベースなどを使ってもOKです

このタムはモノラルなので、真ん中から聞こえます。

5:15~5:51

Stereo bass is OK

ステレオベースの作り方2.ステレオワイドニングツールを使う

次に、このタムに対してsoundtoys社「Microshift」を使います。

このプラグインはステレオワイドニングをするプラグインで、音を鳴らすタイミングを少しズラしたり、ディチューンをすることで横に広がる音を作り出します。

6:02~6:16

Stereo bass is OK

横に広がることで「ボンボン」と重みのあるベースに聞こえるようになりました。

中央では常にバスドラムが鳴っていますので、音の低いタムが左右で鳴ると「中央と左右」でコントラストがつきます。

タムは左右対称で同じ音色・同じ音量で聞こえていますので、特に違和感もありません。

ステレオベースの作り方3.モノラルで確認する

ステレオベースでは位相の打ち消しが問題になりやすいので、ここでモノラルでチェックしてみます。

例えばAbleton Liveの場合は、もともと付属されている「Utility」プラグインに「Mono」のスイッチがありますので、そちらを使いましょう。
他DAWでも、GainプラグインやUtility系プラグインにモノラル機能が付いていることがあります

6:42~6:52

Stereo bass is OK

モノラルで聞いてみましたが、タムの音が小さくなることはなく、しっかり聞こえますので位相の打ち消しはなさそうです。


以上でステレオベースの作り方と注意点の解説は終了です。

当サイトでは他にも音の広げ方についてまとめていますので、ぜひこちらもご覧ください↓


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